川北英隆のブログ

役所仕事にインセンティブを

コロナへの対応やデジタル化のニュースを見聞きし、加えて実際に体験してみるに、日本の役所の仕事が「極の3乗」ほど旧態依然だと思えてしまう。誰も率先して改革という整理整頓をしようとは思っていない。改革を提案すればいろいろと面倒だし、罵倒されかねない。
思い出せば大学もそうだった。直前勤めていた民間企業との落差に(といっても決して革新的な企業ではなかったのだが)、呆然とした。何かを提案すれば、「言い出しっぺ」になり、指揮や作業を率先してやらないといけない。とはいえ、「やろう」と決まれば、それは非常にラッキーだった。多くは「ああだ、こうだ」の議論が続き、没になる。議論に疲れ果てることもある。「やってみなはれ」の世界とは程遠い。やらなくても、誰も困らないに近いからである。
今の役所の実際の仕事がどうなっているのかは知らない。
はるか昔、2年間、某省に出向したことがあるものの、その省は先進的だったし、働いていた課は政策とは遠かった。だから、詳細はわからない。とはいえ、その課から見ていたところ、上級職(キャリア)の出世には、新しくてインパクトのある仕事をしたかどうかがかなり影響しているようだった。逆から見れば、新しいことをやるのに古い仕組みが邪魔にならないかぎり、それには手が付かない。
とすれば、古いものの上に新しいものを乗せる、いわゆるパッチワークがはびこり、複雑になっていく。無駄も残ってしまう。ムダだけであればまだしも、既得権益が残るため、今回のコロナ対応のように、いざという場合の大障害になってしまう。
さらに他省庁との調整が必要なものに対する発想は出てこない。省庁をまたいだ仕事は非常な力仕事になるので、大臣級の仕事になりやすい。つまり政治家が賢くないと、各省庁に限定された「たこつぼ型」というか「サイロ型」というか、狭い行政だけになる。
今の公的年金のように、各省庁が(公的年金の場合、厚労省、総務省、財務省、文科省が)同じような制度と組織を作ることも起こってしまう。マイナンバーが行政全体に行き渡らず、狭い業務に限定されているのも「たこつぼ型」の事例である。行政のデジタル化が強く叫ばれている最中、ワクチン接種証明という紙ベースの業務が新たに加わったのも、もう1つの事例だろう。
どうすればいいのか。役所と役人の評価として、新しい制度や仕組みをいくつ作ったのかだけではなく、古い制度や仕組みいくつ消滅させたのかを取り入れればいい。新しい制度や仕組みを作ってばかりだと、彼/彼女の評価を下げてもいい。言い換えれば、作ることと消滅させることとをセットで成し遂げることが、強く求められる役人像である。
当面の重点目標として、古い制度を(代表的には何十年という間、手つかずの制度を)洗い出し、それを一覧表にして国民に示し、関係者の評判を聴くのも一法かもしれない。紙ベースの申請をデジタル化しようとしている現在、役所の業務のデジタル化を促進する仕事をしたのなら、それを大きな手柄とすることも考えられる。
いずれにせよ、役所での仕事の評価体系を見直し、さらにはその時々の課題をクローズアップして、それに関連する仕事を(もちろん廃止も含め)高く評価し、人事や給与に反映することが求められる。言い換えれば、役所の仕事の評価に本格的なインセンティブを導入しないことには、日本がますます世界から取り残されていく。

2021/08/24


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