川北英隆のブログ

円安が進む理由

ついにドルのレートが140円台に乗った。新聞やテレビのニュースでは、この円安の理由を「日米の金利差」、つまりアメリカの金利水準が高いので「円がアメリカに流れている」「円をドルに変えて投資しようとの動きが強い」と説明している。どこまで本当なのか。
より親切な新聞では、原油や天然ガスの価格高騰にともなう貿易赤字にも言及している。同時に、日本企業が工場を海外に移転したため、円安のメリット(日本製品の輸出競争力が高まる)効果があまり発揮されないとも書いている。
思うに、どの理由も表面的である。根本的には日本の競争力の低下、他国に対する比較優位の低下を指摘しないといけない。
日銀が金利を上げられないのは、空前絶後に緩めた金融政策を多少なりとも引き締め方向に転換できないのは、国内の経済活動が弱々しいからである。国内の消費者物価が上がらないため金融政策を引き締め方向に転換できないと日銀は説明するが、消費者物価が上がらないのは、個人の所得が上がらないからであり、従業員に高い賃金を企業が払えない、もしくは安い賃金でもって日本企業が何とか利益を稼ぎ、それで何とか国際的な競争力を維持しているからである。
裏から言えば、アメリカの状況がまさにそうなのだが、国内の経済が強く、賃金が上がり、物価も上がる(上げても強烈な反発が来ず、「仕方ない部分があるね」で済ませられる)社会にしないといけない。
アメリカと日本の差はここから生じている。アメリカの金利が上がり(アメリカの中央銀行=FRBが政策金利を上げられ)、日本が上げられないのは、この彼我の差である。
つまり、日本経済が強くなり、再び東の空から昇ってくることが、円安を止める根本的な解決策である。客観的に考え、日本が東から昇るのは当面は無理だろうから、円安はまだまだ進むのだろう。もちろん、長期的に円安だと考えているだけであり、短期的な綾はあろう。

2022/09/03


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