川北英隆のブログ

「円安は望ましい」は誤り

日経ヴェリタス(10/16号)に寄稿した記事が掲載されている(そのはず)。題して、誤りだった「円安は望ましい」。これまで何回か書いてきたことを1つにまとめてある。
記事の内容は次のとおりである。ここに思い出すまま、思いつくままに書くだけだが。
1つに、円安が望ましいと思うのは輸出企業だけである。これまで電気機器や自動車などの輸出企業が日本経済を支えてきたから、「円高は敵、円安にしてほしい」との大きな声が政府に届き、政府をその気にさせた。
でも考えてほしい。国民にとって円安が望ましいのかどうか。コロナの喪が明け、海外に自由に旅行できるようになれば、今回の激烈な円安の酷さが実感できるだろう。エネルギー価格、食料品価格が上昇するのも、大きな要因は円安である。エネルギーや食料の受給率の低い日本としてみれば円安は困る。
世界がきな臭さを増しているので、政府が防衛予算の暗黙の上限として定めている「国内総生産(GDP)の1%」という枠を緩めようとしている。しかしドルに対して円が30%も40%も安くなれば、アメリカから防衛のための機器を買う予算を30%も40%も増やさなければならない。政府としても円安は影の敵である。
要するに、円安は国力を弱め、国民の生活を貧しくする。
図は日銀のデータに基づき、日本円の名目実効為替レートと実質実効為替レートを描いたものである(上にあれば円高)。名目実効為替レートは、各国との為替レートを、その各国との貿易額で加重平均して求める。ドルだけでなく、ユーロなどの各国の為替レートを平均したものと考えればいい。そこから各国の物価の変動を取り除くと実質実効為替レートになる。以上の図からわかるのは、1995年を境に名目実効為替レートの円高が終わっていること、実質実効為替レートは1995年を境に円安に転じていることである。
では1995年以降、円高が終わり、むしろ円安に転じたことによって日本企業の競争力が高まったのか。実際は逆である。9/25のブログ「日本の産業構造の劣化」に詳しく書いたように、輸出の主力だった電気機器の競争力が弱っている。象徴は、かつてアメリカに恐れられた日本の半導体が今や絶滅危惧種になったことや、スマホをアメリカや韓国からの輸入に頼っていることに見られる。
と、ここまで書いて、「日本の産業構造の劣化」をアップしていないことに気づいた。別のブログとして、このブログの次にアップしておく。
戻ると、名目実効為替レートと実質実効為替レートの今の姿は、日本企業の競争力が落ちた結果でしかない。では競争力が落ちた理由は何なのか。
ここからは半分推察なのだが、円安は輸出企業に収益的な余裕を与える。だからグローバルな競争力を高めるための努力をしなくていい。居心地がいい。企業はこの「ぬるま湯」に安住してしまったのではないか。
円高になり、競争力を高めないと生き延びられない状況に追い込まれたことが、かえって日本企業の活力源だった。1ドル360円の固定相場制の時代から変動相場制に移行し、円高の歴史が始まった。企業は競争力を維持し、さらには高めるための努力を必死で行った。その当時の状況に戻さないと、日本の国力はますます衰弱して。そんな危機感を覚える。
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2022/10/16


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