川北英隆のブログ

新NISAはどこまで本物か

2024年からNISAが刷新され、非課税枠とその期間が広がる。NISAとは何かといえば、少額投資非課税制度である。こう書かれても「何のこっちゃ」かもしれないが、「非課税」にポイントがある。この制度への期待が、とくに政府内で高まっている。どこまで本物か。
金融庁によれば、NISAは イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をまねたもの、つまり日本版ISAだから、Nippon Individual Savings Account=NISAと名づけたそうだ。ダジャレ的に、「NISAって何さ」と問えば、「NISAって元々いいさ」と返ってきそうな。
2024年から始まる新NISAについては、ネットであれやこれや紹介があるので、それを斜に構えつつ見てほしい。とくに証券会社が熱心である。さらには新NISAの対象となる投資信託が約1000本選ばれたと、投資信託協会が公表した。証券会社が実際に動けるツールが揃ったことになる。
NISAの狙いは、貯蓄から投資への流れを作ろうということにある。個人金融資産を銀行預金から証券投資へ向かわせることである。証券に投資してもらい、日本経済の発展に役立てようとの意図も同時に含んでいる。個人も日本企業も嬉しい状態を狙うことに等しい。
とはいえ、この嬉しい流れを作るには難関がいくつかある。
1つ、投資信託の中に好ましい商品があるのかどうか。好ましい商品がなかったとき、枠の一部で個別の株式への投資も認められているが、それが本当に機能するのか。
すでに書いたように、投資信託として1000本がNISA用に選択可能だと選ばれた。その1000本を見てみたが、1000もあるので何が何だか。選ぶのは不可能だと思えた。何らかの工夫や指南が必要だろう。
では個別の株式に振り向ければどうか。これも残念ながらに等しい。NISAの年間上限枠は大きくない。個人にとって比較的安全な投資先企業を分け(分散し)、さらに買い入れる時間を分け、大きな損失を回避するのは難しい。これと思える企業の場合、最低投資単位が大きすぎ、50万円は必要である(以前、平均的な金額を計算したのだが正確な金額を忘れた)。これでは年間240万円の枠が数回で埋まる。つまり、心もとない。
今の日本の制度では100株単位でしか株式を買えない。これを1株で買えるようにしてほしいものだ。そんな提案を金融庁がしようものなら、経団連ちゃんが猛反対するのだろうか。
2つ、日本の株式に資金が本当に流れるのか。海外株が大人気である。投資信託にしても、日本よりも海外企業向けが魅力的だから、日本企業に資金が流れないかもしれない。
そもそも代表的な株価指数である東証株価指数(TOPIX)には約2000社が組み込まれている。いくらひいき目に見ても、日本企業の2000社がすべて長期的に発展するとは思えない。100社もあれば御の字だろう。
しかし投資信託の多くはTOPIXに投資しようとしているし、プロの投資家はTOPIXを偏愛し、TOPIXが本当の投資に耐えうる株価指数だと常に主張しているのである。「変なの」だろう。と、ここまで読めば、「そんな素人のような日本のプロが組成している投資信託を本当に買っていいの」と疑問に陥ってしまうかも。
3つに、これは余計なことだが、投資への流れから日本の債券は取り残されかねない。利回りがほぼゼロだからである。常識的に考えればわかることだが、借金にまみれた状態の先、たとえば今の日本にお金を貸すものではない。ということで日本の財政にとって、貯蓄から投資への流れが実現すれば、極めて厳しいことになる。日本国にとって諸刃の剣である。

2023/06/28


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