川北英隆のブログ

教育の貧困が進む

最近の日経新聞の特集では教育問題をとり上げている。いい企画だと思う。日本の教育について問題が多い。とはいえ、最大の問題は教員と学校の質だろう。
数年前、中高と同級生だった知り合い(高校の教員)が言うには、教員の自由度が削られ、その一方で責任が大きくなったとか。夏休み、用もないのに学校に出向かないといけないとか、生徒の指導のために放課後も非常に多くの時間をとられるとか。彼は何も言わなかったが、その割に給与が安いのだろう。年功序列に近いから、努力してもほとんどその甲斐がないだろうし。
かつての教員の社会的な位置つけは高かった。教員を輩出した家系は「あの家系は賢いなあ」と評された。戦前は原則、師範学校を卒業して教員になれたからである。
今はというと、大学で教職課程を習得しなければならない。遊びたい文系の学生にとって負担である。理系の学生の場合は知らないが、どうせなら企業の研究職に進むのが理想ではないのか。それに教員の給与は安い。むしろ民間に勤めたほうが「勝ち組」になれよう。
先日、奈良への日帰り旅行から戻る修学旅行中の中学生と出会った。埼玉県から来ていた。それを引率している男女の教員を観察していると、幻滅に近かった。
女子教員らしいのはスマホに夢中だった。生徒に「どこそこで降りるから」と言い聞かせてあるためだろう。
男子教員は背中にだらしなくリュックを背負っていた。時々、学生の荷物の置き方に注意するのは女子教員よりはマシな証拠だろうが、体型がだらしないから(針で突くとしぼむくらい、ぶょっとしている)、「できる教員」のイメージからほど遠かった。
埼玉県人で、娘を公立の中学校に通わせている知人の情報によると、「(その娘の言では)中学校の教員は最悪やそうでっせ。いつも30分は受業に遅れてくる教員やら、問題児に媚びを売る教員やら、ろくにパソコンを使えもしないのに自慢して、パソコン部の連中に陰でアホ呼ばわりされてる教員やら」が揃い踏みでいるとか。
できる生徒の方も中学校よりも塾に期待してるのだろうが、そんな変な教育や教員に疑問を発しない教育制度そのものが変である。もっといえば、社会的に尊敬される教員がいてこそ教育が成り立つ。生徒は尊敬する先生のマネを少しでもしようとする。現実はというと、尊敬できる先生がどれだけいるのか。裏から見れば、バカにしている教員に教えてもらったところで、何も耳に入らないのは当然である。
社会的に尊敬される教員とは何か。少数の超越した教員を除き、ほとんどは金銭的価値、すなわち給与の多さで評価されるのではないか。教員も、その給与水準に応えるに違いない。今こそ本気で教育のあり方を考えるべきである。

2023/06/26


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