川北英隆のブログ

企業は黒字ならいいのか

白袴に類した状況は厚労省の業務にも及んでいる。少し前、医薬品会社の社長から聞いたのは、病院で使う薬価の引き下げにより、新薬の開発意欲が削がれていることだ。
開発には多大な研究費がかかる。成功するかどうかわからない。成功したとしても安く評価される。だから努力して新薬を開発してもむなしい。
もちろん薬品会社からの説明だから、自分たちの都合がいいように話している部分はあろう。しかし現実は、この医薬品会社の社長の懸念した方向にある。
病院の窓口に行くと、普通の薬が不足していると書かれている。新しい薬が入手困難になっている。そして最先端の薬は日本で手に入らない。要因の多くは日本で薬を製造、販売しても儲からないからである。
黒字は出るのだろう。しかし資本を提供している株主に満足してもらえる水準の黒字は難しい。そんな「安く評価された薬」を日本で大量に売ると、その医薬品会社のPBRは1倍を割ってしまう。
厚労省として、製薬会社は一番御しやすい。利用者である国民からは保険料を徴収しなければならないが、文句が出やすく、政治家の同調を求めてくる。そして医師は難敵である。
だから製薬会社を絞り上げ、保険料と医療費を極力上げないよう努めてきたのだが、ついに限界に達したようだ。薬品会社が日本において、一種のサボタージュを始めたと理解すればいい。
厚労省関係の、もう1つの白袴は介護である。田舎住まいを始めたカミさんの知人が、介護サービスに従事したことがあった。体力とやる気のある精力的な女性なのだが、仕事の大変さにしばらくして辞めた。一方で、僕が知る限りでは、いい加減な介護が目立つ。
要するに、介護サービスは割に合わない仕事である。賃金を払わないと、「なかなかいいね」というサービスは受けられない。思うに、現行の介護保険という制度に無理がある。「高くなく良質な介護を受けられる制度」は理想ではあるが、老人が増え、人口が減少する日本においては「絵に描いた餅」かも。当初の制度設計が楽観的だったのだろう。
企画担当に配属されたサラリーマンの常套手段として、プロジェクトを設計する場合、費用を甘めに、条件を緩めに(計画に都合がいいように)想定し、企画案を通そうとするものだ。通せば自分の手柄になる。本当はその企画者にプロジェクトが完成するまで、終始面倒を見させればいいのだが、そうはならない。大阪万博という比較的短いプロジェクトでも当初と現在では非常に大きな予算上の狂いが生じている。
少し話がズレた。元に戻すと、実態を知らない者が企画すると、将来に向けて非常に厄介なことが生じる。介護保険、もっとコストを払わないと介護の提供者がいなくなる。かといって良質な介護の提供者を十分確保するには、いまの介護保険料ではどうしようもない。
年金、医療、介護の福祉制度について、相互関係を想定しつつ、抜本的に見直すべきである。同時に、家族が両親などを介護した場合にどうするのか、地方をどうするのかをまじめに考えないと、制度運営に際して非常に大きな損得が生じてしまう。

2023/12/13


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