川北英隆のブログ

日本の株価の夢と実態

日本の株価が上がっている。NISA(少額投資非課税制度)が拡充されたので、その影響が大きいのだろう。日経新聞も買いを煽っている。今日も「PBR(株価純資産倍率)が改善した、企業が頑張っている、経営努力をしている」と報じていた。本当ところ、どうなのか。
PBRの推移を調べ、その図表をアップしておいた。
以下には次の前提がある。すなわち、PBRが1倍を割れるのは、株価が企業の解散価値以下であり、投資がその企業の経営にダメ烙印を押していると。詳細は証券アナリストジャーナルに寄稿した川北の論文を参照されたい。最初のページだけ無料で閲覧できる。
東証が「PBR1倍割れは問題だ」と企業に気合を入れたのが23年の3月末だった。当時のPBRを調べると、東証株価指数(TOPIX)採用企業2072社の中央値(PBR順に並べた場合、真ん中の企業のPBR)は0.96倍であり、51.9%の企業が1倍を割れていた。
TOPIXに採用されている企業は、世間的には一流企業である。その一流企業の半分以上がダメ企業とは「トホホ」と東証が嘆いたかどうかはしらないものの、異常である。その東証はというと、さすがに1倍をクリアしている。
では今はどうなのか。1/9の状況を確認したところ、PBRの中央値は1.038倍、1倍割れ企業の割合は47.4%に改善していた。この改善を「すばらしい」と評価するのかどうかは疑問だが、今日の日経新聞は「すばらしい」をクリックしていたことになる。
もう少し客観的に評価するため、「投資家が企業の努力を評価したから株価が上がり、その結としてPBRも高くなる」との想定を置いて計算したところ、東証が気合を入れてから半年間程度は「企業が努力しようとしている、投資家が評価しようとしている効果」が続いたようだ。しかしそれ以降は効果が薄れつつある。
これから先、企業の努力が本物かどうか試される。今日(1/10)、株価がかなり上がっているので幸先が良いというか、NISA効果というか、微妙なところだが。
20240110PBR.png

2024/01/10


トップへ戻る