川北英隆のブログ

技術者蔑視は日本の象徴

昨日の日経新聞に「見下され続ける下請け」との見出しがあり、トラック運転手の過酷さが紹介されていた。荷下ろしまでさせられ、これに多くの時間が割かれるとか。この記事に思うのは、日本では専門家や技術者の地位が低く、日本の地位低下の元凶だということ。
昨年の初夏だったか、某氏と日本のシステムエンジニア(SE)の地位の低さについて議論した。彼が証券会社に新卒入社したとき、SEの地位が非常に低かったという。1980年代後半か90年の初めである。当時の金融業界は理系の学生を大量に採用しつつあった。金融工学に対応するためである。しかし採用した理系の人材の多くは一兵卒であり、経営トップ候補者ではなかった。
その10年ほど前の保険会社もそうだった。今でいう総合職として採用した新卒を大量にシステム部門に配属していた。保険会社の場合、大量の保険契約を処理するため、いち早くIBM製メインフレームを導入したことで有名である。しかしシステム部門に配属されるのは文系の学生である(だから多くは数学的な能力で理系に劣る)。また配属した学生の中で経営トップ候補者は1割程度いたかいないかだろう。
そんな日本企業のシステム部門のトップに誰がなるのか。当時、SEなどの経験者であることは稀だった。システムのことはSE任せ、要するに総務的なことができればSE部門のトップに座れるのが常態だった。
これに対して海外の金融機関はどうか。証券分野を含めた金融は情報産業だとの認識と、その認識に基づく経営が当然視されていたし、それが今も続いている。経営のトップが、システムが何なのか、システムとして何が必要かを熟知している。だから部下にもそういう人材を配置するし、大切にする。
日本では、外部との交渉能力に長けた人材や社内政治の達人が出世する。専門家や技術者にそんな能力を期待するのはお門違い、だからどうしても冷遇され、やがて見下される。
こんな日本と海外の違いが何十年も続くと、それは社会構造の差となる。日本の情報システムが周回遅れ、ダブル周回遅れになっているのは「むべなるかな」である。
そうそう、日本にも通信やシステム専門の大上場企業があった。しかし電々公社、今のNTTの下請けとしての活動が主だった。やはり地位的にはNTTの子分である。そんな子分企業が世界に冠たる企業になれるわけがない。通信やシステム専門の会社の経営者は技術を横に置く。そして、電々公社に唯々諾々と従うか、その親との政治的交渉を本分としたに違いないから。

2024/04/18


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