川北英隆のブログ

日銀はETFを売るべき

日銀は神様ではない。間違いを犯すし、犯してきた。最大の間違いは1980年代後半、急激な円高に対して急激な金融緩和で対抗したことだ。1985年9月、ドル高是正のための主要5ヶ国の合意(プラザ合意)が日本に不況を招くとし、金融政策を誤り、バブルを招いた。
バブルとは、1980年代後半の、まさにプラザ合意以降の地価と株価の異常な高騰である。このバブルの要因はいくつかあるが、1つは日銀が行き過ぎた金融緩和に踏み込んだことにある。
1ドル360円の固定相場制の時代は1971年8月のニクソンショックによって崩壊した。その後は円高の歴史が続いた。その円高を、企業、金融関係者、政治家は「悪者」扱いした。実際のところ、円高は日本経済に対する礼賛であり、素晴らしいことだったのだが、現実は企業の「えらいこっちゃ、働いても働いても楽にならへん」との短絡的な声に、多くの関係者が頷いてしまったのである。日銀もその一人だった。
円高がデフレを招いた、そういう声が今でもある。しかし大きな間違いである。1990年代に入り、バブルが企業経営にダメージを与え、企業は人員削減を含めた人件費の削減を図り、何とか業績の底入れを達成した。労働組合も保守的になり、人員削減にならないよう賃上げ要求をしなくなった。でも結局は、賃上げをしないから物価が上がらなくなった。
企業もまた、「従業員に優しい」を装いつつ、機械設備の導入による生産性の向上を目指さなくなった。言い換えると、古い設備の寿命を伸ばし、新たな投資をしなくなった。新しい製品やサービスの提供はリスクだからと回避した。やがて日本企業は世界との競争に敗れ、これが円安のマグマを溜めた。それがコロナを気に一気に爆発し、円安が現実となり、物価上昇が生じた。
「インフレの時代が終わった、終わらせた」との自慢話がちらほら聞こえるものの、残念ながら賃金が上がったから物価が上昇したわけでない。日本の競争力がなくなったから物価が上昇したという、悪い物価上昇でしかない。その物価の上昇に追いつこうと賃金が上がっているに過ぎない。それも組合費を徴収している労働組合の声ではなく、政府の音頭での賃金上昇という情けなさである。
そんな中、何とか物価を上げたい、そのために異次元の金融緩和をやるというので、これもまた異次元の、先進国ではありえない形で日銀は大量に株式を買った。上場投資信託(ETF)によって株式を買うという形態である。今はそのETFが値上がりし、日銀に多額の収益をもたらしている。「日銀はこのままETFを持つべき」との声があるものの、そもそも日銀は株式投資をするための機関ではないし、そんな役割を誰も命じていない。
しかも昨日書いたように、新規参入した他人任せの個人がNISAを使って株式市場にミニバブルを生じさせている。日銀として、1980年代の後半に生じさせたバブルの二の舞いを防ぐのが本来の役目であり、ETFを売って加熱を防ぐべきである。現実はといえば、100年計画とも言われる「アリの小便」程度のETF売りしか始めていない。
誰も動かない、「政府任せの日本かいな」だ。その政府はアメリカ任せ、トランプ任せに陥りかねない。日本、情けないことになってしまったものだ。

2026/03/24


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