川北英隆のブログ

株式市場の心配の種

金曜日、ライフネット生命保険で話していると、株式市場の話題になった。ライフネット自身、ほとんど株式に投資していないので、ある意味で話題が横道にそれたわけだ。
話しの発端は、保険会社に対するソルベンシーマージン規制の刷新が株式市場に与える影響だった。株式のリスク評価が厳しくなるので、保険会社が株式投資を続けられるのかどうか、それが日本の株価に大きな影響を与えるのではないかという議論である。
株式投資に制約がかかるのは保険会社にかぎらない。会計制度が変更され、企業が保有する株式の時価の変動を損益計算書に反映させようとの検討がなされている。株価の変動は当期純利益には影響しないのだが、「その他の包括利益」という項目が設けられ、そこに株式時価の変動額を反映させるよう改められる。さらに、当期純利益とその他の包括利益を合算したものが「包括利益」として開示される。包括利益とは、その名前のとおり、企業の事業活動や保有資産の価値の変動等、すべての損益を足し合わせ、企業業績の全体像を直接把握できるようにしようとの項目である。
現在は貸借対照表にだけ株式時価の変動が影響を与えているので、そこから投資家自身が時価の変動を計算しなければ、株価の変動が企業経営に与えている影響を把握できない。この現状と比べれば、包括利益を参照することで、投資家がより簡単に、企業業績の全貌を把握できるようになる。日本の投資家が今までのように当期純利益を重視するのか、それとも包括利益に重点を移すのかは即断できない。しかし、投資家が合理的に行動するのなら、企業が保有している株式の時価の変動を投資判断の材料とするのは自然の成り行きである。
そうだとするのなら、銀行や事業会社が保有している株式の質と、その保有目的が問われることになる。株式持ち合いを単純に続けることは困難なのではないだろうか。
需給だけで長期的な株価の水準が左右されるとは考えられない。業績に見合った株価が形成されるはずである。一方で、業績に基づく株価形成がより鮮明になると考えられる。企業として必要なことは、誰に株式を持ってもらうのかの戦術ではなく、株式を持ってもらえるような魅力的な業績を示すことである。

2009/10/17


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