川北英隆のブログ

裁定取引の大失敗

昨日、とんでもない飲み屋の話を書いたので、その続きである。日本文字でどう書くのか知らないが、「ここいち」のカレーを東京で食べて「大失敗」だった。では、それと裁定取引とどんな関係があるのか。
大学に行った時の昼飯はほぼ決まっている。学生時代から生協の飯は嫌いだったし、会社では社員食堂が嫌いだった。あまり親しくもないのとばったり出会い、そうでなくても美味くない飯を一緒に食べるのは「堪忍や」と思っていた。だから、一人の時は習慣として外に出て食べるか、席で食べるのが常套手段である。
現在の大学で食べに行く店の一つが「ここいち」のカレーである。近くにある(「あった」が正しいかもしれないが、「ある」か「あった」かは確認していない)カレー屋より格段にレベルが高かったことと、「ここいち」と同程度の質のカレー以外の店が少ないことから(何それ、どういう地域や)、愛用している。といっても、月に数回程度であるが。
今回、東京に出て、飯を一人で食べないといけなかったので、つい思い出して入ったのが「ここいち」だった。で、カツカレーを注文しようとした。
またまた脱線するが、カツカレーは「ここいち」で何種類かある注文パターンの一つである。昔からカツカレーが大好きだった。学生時代、北海道に旅行するとき、大阪からまる一日近く列車に乗って着いた青森で、腹が減ったので注文したのがカツカレーだった。カツといっても出てきたのはクジラ肉のカツだったが、美味かった。また、入社4年目で大阪から東京に転勤になり、東京に着いて赴任先に挨拶に行く直前に食べたのもカツカレーだった。今でもあると思うが(少なくともつい最近まであったが)、有楽町のカード下の「王様のカレー」で注文した。
戻ろう。「ここいち」でカツカレーを注文しようとして、ほとんど形式的な確認のためにメニューを開けた瞬間、「ええっ」と思った。というのも、大学周辺よりも50円高い。たかが50円と言えば50円だが、証券投資論を担当している者にとって、致命的である。その致命度合いを説明しておくと、裁定取引ではなく、逆裁定取引を強いられるからだ。京都でいつでも安いカツカレーを食べられるのに、わざわざ交通費を大枚払って東京に出てきて、しかも選りによって50円も高いカツカレーを注文して食べるなんて、「愚の骨頂」であり「証券投資論を教える者の風上にも置けない」行為でしかない。
「何を言っているのかわからない」という人のためにもう少し説明すると、東京では50円も高いので食べる気にならないカツカレーを、安く食べられる京都に遊びに来たついでに食べて、「ざまを見ろ、50円もの大儲けだ」と自慢するのが裁定取引(同じ品物を安く仕入れて高く売る、安く食べて満足する)の真骨頂であり、醍醐味である。証券投資論の一つの基本原理が、この裁定取引なのである。
とはいえ、現実は、カツカレーを注文して食べた。まあ、いずれにしても何か食べないといけなかったのだから、逆裁定取引といえども満足できれば十分だし、東京は場所代がかかるし、他のものを食べればもっと高かったかもしれないし、「しゃあないか」と、店を後にした。
追記:後で調べたところ、価格差は20円でした。訂正しますが、「裁定取引が大失敗」だったのは確かです。

2009/10/28


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