川北英隆のブログ

本日の大機小機への疑問

4/7付け、日経朝刊の大機小機「日本の潜在成長率は3、4%」は変だった。主に2つの点でおかしい。
このコラムの要旨は、日本の潜在成長力は3、4%だと推計することにある。根拠は、通常の成長会計、つまり、「経済成長=労働力の成長+資本の成長+生産性の伸び」に基づく。成長の内訳として、労働力は人口減少があるからゼロ%の寄与。資本は民間資本の増加と道路、通信、エネルギー、病院、学校などの公共投資があるから「一般的な1%の寄与」よりも高くなる。生産性は「一般には過去10年の実績」に基づくが、この過去10年は日本が低迷した時期であり、今後はすぐれた企業経営者が出てくるので(ということだと読めたが)生産性も高まる。以上である。
まず、人口減少の中で労働力の成長がゼロというのは楽観的だと思えるが、これには女性就業者の増加期待など、いろいろな議論があるだろう。ということで、とりあえず疑問をさしはさまない。
次に、資本の増加に多くを期待するのは問題だろう。通信やエネルギー投資は公共投資ではなく、民間が行うものである。しかも、既存の資本と置き換わっていく。採算性に基づく投資であり、本当のというか純粋な公共投資のように「将来の需要があるから」という単純な理由だけで投資されるものではない。一方、道路、病院、学校への投資に期待するのはどうか。これまで、これらの投資がバラマキであり、粗製乱造であり、造った後の負担を強いるものであったことを考慮すべきである。
最後に、生産性である。本物の企業経営者が登場することに異論は唱えない。しかし、本物の企業経営者が日本を舞台とするかどうかは疑問である。そもそも潜在成長力は「日本国内での生産」を議論している。海外での生産はカウントしない。この意味で、本物の企業経営者が「国内の生産性を高め、それが日本の潜在成長力を高める」という議論には飛躍がある。

2010/04/07


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