川北英隆のブログ

鉱工業生産をどう見るか

6月の鉱工業指数が公表された。生産は季節調整済指数で前月比1.5%の落ち込みである。この数字をどのように評価するのか、景気判断も難しい局面を迎えている。
というのも、主に貿易指数の評価において何回も指摘してきたように、2008年10月以降のリーマンショックの影響から、公表される統計数値において月々の癖をうまく調整できていない(つまり季節調整の狂っている)可能性が高いからである。そこで、これも貿易指数で使っている「2年前の同月との比較」を用いると、5月がマイナス14.5%、6月がマイナス9.4%と、依然として回復の途上にあることが判明する。2008年6月の生産水準はまだリーマンショックの影響を受けていないから、「2年前の同月との比較」の数値はまあまあ信頼できる。つまり、生産水準の十分な回復は達成できていないものの、回復の動きが止まったわけではない。
一方、貿易の方は楽観できない。こちらも6月の数値まで公表されている。これによれば、輸出数量の増加は続いているものの、これまで輸出を牽引してきた中国向けの増加テンポが、今春以降鈍っている。アメリカ向けやヨーロッパ向けの回復が遅れる中で、中国向けの輸出の鈍化は痛手である。
日本経済の回復が輸出次第であることを考えると、日本経済がリーマンショック前に戻るのはハードルが高そうである。

2010/07/30


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