川北英隆のブログ

教育と経済への雑感

10/13、「教育と経済」と題するコラムが日経の大機小機に掲載されていた。教育がイノベーションをもたらし、人口に規定されることなく経済成長をもたらすとする。これに対して感想がある。
コラムでは明治以降の人口推移とGDPを見ると、1人当たりGDPが成長してきたから、今後は教育に力を入れれば人口減少を乗り越えられるとする。本当だろうか。
もちろん、技術進歩により、生産性が向上し、それがGDP成長をもたらすのは疑う余地がない。しかし、明治以降、1975年までの日本経済の発展は、欧米という目標があり、それへのキャッチアップによってもたらされた点を見逃してはならない。現在、日本経済全体としてキャッチアップすべきものがない。だから、今後の生産性の向上は限定的である。
つまり、明治以降を取り上げ、生産性向上によって人口減少を乗り越えられるという議論には大きな飛躍がある。このような「楽観論」というか「翼賛的」というか、そういう議論をいつまでも掲げているから、国にも企業にもほんとうの意味での危機意識が生じないのだろう。
次に、教育が重要なことは当然である。コラムではいろいろ書かれているが、現場から見ると、大学生に真剣さがないこと、これが最大の問題である。毎年、進級要件を課し、勉強しなければ卒業はおろか、学年が上がらないシステムを大学が取り入れ、それを文科省も認めるべきだろう。
かつても大学生は勉強しなかった。しかし、社会がキャッチアップの段階にあったから、既存の文献を翻訳するだけで多くの技術が得られた。大した教育も必要なかったのである。今後は日本自身が技術を生み出さないといけない。かつてよりも質の高い教育が必要だということを示唆している。大学に席だけおいてバイトに明け暮れ、ほぼ自動的に卒業できるのでは、何のための大学教育かわからない。この意味からすると、大学の入学は4月か9月かの議論は枝葉末節、形式主義でしかない。
教育には資金が必要である。教員の数を含め、十分な予算措置が必要となる。政府が財政難から、教育も他の予算も同じ率で削っているのは間違っている。もちろん、大学生を真剣に勉強させるようにして教育の効果を高める措置と、予算の増強はセットである。

2011/10/15


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