川北英隆のブログ

日銀による外債購入論の変

円高が収束しないので、「日銀が外債を買い、円安に誘導したらどうや」という議論が盛んである。この議論は大いに疑問である。その理由を思いつくままに述べておきたい。
第一に、日銀の役割論はともかくとして、民間が買わない外国通貨をどういう理由で日銀が買うのだろうか。中央銀行といえども、広い意味で政府の片割れである。それが為替介入という見え見えの政策のために外貨を買うのは問題が大きい。それなら、政府が堂々と為替介入する方がすっきりしている。
第二に、民間が何をしているのかだ。企業は円高で苦しんでいると言うが、そもそも成長力を失った国内に拘泥し、海外への進出に消極的過ぎないのか。海外に進出して商売を盛り上げることで結果として雇用も増える。本気で国内の空洞化を恐れているのかどうかは不明だが、国内に閉じこもることにより、商売の中心が海外に移り国内ウェイトが低下するという意味での空洞化はないものの、全体として日本企業が朽ち果てていく。朽ち果てるよりも、海外に出てチャンスを狙うのが上策だろう。そして、海外進出に積極的になれば、円高問題は自然解消する可能性が高い。要するに、円高は企業の自縄自縛と思える。
第三に、日銀が外債を買うのではなく、公的年金が海外資産を増やす手があり、こちらの方が自然である。年金は将来の国民の財産である。投資理論からすると、日本国内の財産と海外の財産とを分散して保有することが望ましい。「日本経済がぽしゃったところで海外資産がある」体制にしておくことが望ましい。もちろん、現在のように日本国債を大量に保有することは、たとえば超インフレになったとしても、保有している国債の価値が無価値に限りなく近づく一方で、現時点での年金の支給額も無価値に限りなく近づく。このため、超インフレは乗りきれる。そんな思惑があるのだろうか。それよりも、海外資産で国民の財産を保全するのが正統的で正しいと思うのだが。
以上のうち、第一の論点を避けるのは「事なかれ主義」だとして、第二、第三の論点を避けるのは、官頼みの最たるものなのか、既存の秩序を重視するあまりなのか、もしくはまったくそんな方策に気づかないためなのか。いずれにしろ、日銀による外債購入論は飛躍しすぎている。

2012/10/04


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