川北英隆のブログ

平成版生類憐みの令

ニュースを見聞きするにつれ、腑に落ちないのが、生き物が人間の都合で殺されていくことだ。それに対して子供には体罰禁止だとか。間違いだらけのスタンスである。
今日のニュースでは、長野駅にクマ2頭が出没し、1頭が撃ち殺されたという。もう1頭は逃げて行方不明だとか。1頭でも助かったのは幸いだ。そもそも、クマが都会に出てくるのは食料がなくなったからである。人間がクマの領域に侵入したからだ。その一方で、クマの頭数が減っていて、絶滅危惧種である。
それで思い出したのが、知床ではヒグマに遭遇する回数が増えているとのこと。最近よく登場するK氏が今夏、世界遺産の知床に行き、羅臼に登ったところ、クマに出会ったとか。僕はというと、北海道の登山によく行ったが、ヒグマを直接見たことがない。ある時、猟師が同行してくれた。そのときのこと、ヒグマが登山道直下の茂みの中に隠れていた。猟師は石を投げてヒグマを威嚇した。
それなのに、知床ではヒグマに餌を与える観光客もいるとのこと。そんなアホな観光客こそ射殺に値するだろう。多くの登山者を間接的に危険に晒しているからだ(人間=食べ物を持っているとクマが思い込む)。
射殺は極論として、自然遺産に指定するのなら、最低限の政策として観光客や登山者から入域料を徴収し、レインジャーが域内をパトロールすべきである。知床(屋久島も同じ)の自然が既得権益化し、観光が前面に出過ぎている。入域料の案は、それが観光客を減らすとの反対意見で即時に潰される。
日本の場合、自然遺産=観光資源に化し、世界遺産の本来の意図から逸れていることが大いに問題である。その結果、知床では、いずれ誰かがヒグマに襲われるだろう。その時、ヒグマが殺される。何ともやるせない。
もう1つ、スズメバチが人を襲い、そのハチが駆除される。スズメバチは、騒がなければ積極的に襲ってくることはまずない。子供がハチを見てギャーギャー騒ぐから、相手もびっくりして襲ってくるだけだ。まあ、1回くらい刺されるのは自然が与えた体罰であり、良い経験なのだが。「じゃあ、お前はどうだったんや」と問われれば、「子供の頃、毎年1回はハチに刺されていたんやで」と答えておこう。
自然を正しく理解し、体験することが重要だろう。ハチ=自然=怖いとの概念を植え付けることは良くない。逆にクマの場合、クマ=(ヌイグルミみたいで)可愛いも間違っている。最近の子供にとって、自然と日常的に接し、客観的で正しい理解を得る機会が少なくなったのは哀れなことだ。
ということで、クマもハチも人間の子供も、平成版生類憐みの令を発することで正しく生き、教育されないものかと、ふと考えてしまう。

2012/10/05


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