川北英隆のブログ

医療・介護リートへの投資

遅ればせながらの話題である。10/3の日経新聞に「介護・医療REIT上場へ」との記事があった。同じ記事の他の見出しには「施設整備に個人資金」、「三井住友銀など来年にも」とある。
リート(REIT、 Real Estate Investment Trust)とは不動産投資信託のことである。ただし、普通の投資信託とは異なり、上場されている。
10/3の記事は要するに、医療、介護施設用の不動産(土地、建物)を運用する専門ファンドが来年度にも日本に登場するとのことである。このファンドはREITの形態で証券市場に上場され、個人のような小口資金の投資家でも投資できるようになる。現在、上場されているREITはオフィスビル、マンション、商業施設向けのものを投資対象としている。来年度には、そこに医療、介護施設用のものが加わるだろうということだ。
では、この医療、介護施設用のREIRは儲かるのか。以前にも書いたが、医療、介護施設用REITに関わってきたものとして、少し書いておきたい。
介護・医療のREIT(注意深い読者は、医療と介護の順番が入れ替わっていることに気づいたと思うが、「介護・医療」という順番は日経の記事そのものの順であり、政治的な匂いがしていそうだ)、このREITの記事の背景には(表裏一体かな)、9/29に大阪で(東京は9/23だったか)開催された日経BP社主催のセミナーがあるように思う。当然、さらにその背景には何回か書いた国土交通省の「ヘルスケア施設供給促進のための不動産証券化手法の活用及び安定利用の確保に関する検討委員会」と、その報告書がある。
実は、9/29の大阪でのセミナーでは僕が基調報告をした。9/23の東京も打診されたのだが、打診された当日はイランにいたので即答しなかったところ、他の検討委員会メンバーに振られた。ありがたいことだ。
それはともかく、セミナーでは2つばかり留意事項を述べた。
1つは、リーマンショック当時、REITが破綻したか、実質的に破綻した事実を忘れないようにということだ。9/29の朝日新聞の朝刊に、非常にタイミング良く(多分、意図的にセミナーにぶつけて掲載されたのだろうが、ってうがち過ぎか)、ファンドが介護を食い物にするというような論調の記事が一面トップにあった。それは大袈裟すぎるが(そうであるのなら、すべての正しい医者は赤貧洗うがごとしでなければならないが)、一方で10/3の日経のような、手放しに近くREITの効用を説いた記事もどうかと思ってしまう。
もう1つは、オフィスビル、マンション、商業施設、医療・介護の順に、不動産会社的な入居者の選別基準が機能しなくなる。スーパーマーケットのような商業施設の場合、スーパーごとに特色があり、施設の汎用性が低い。医療・介護の場合、誰に施設のサービスを任せるのかが、施設運営として最大の選択である。それだけに、REIT(不動産投資)とはいえ、医療・介護のサービス提供者を選別するノウハウが、REITが成功するかどうかの分岐点となる。つまり、REITに投資するには、その仕組み(すなわち関係者のセットアップ)を担っている機関(銀行や不動産会社などの機関)が信頼に足るかどうかが重要である。言い方を変えると、個々の施設ごとに、誰が運営しているのか、どういう所有と運営構造になっているのか、どういう入居者がいるのか等の情報をこと細かに示されたところで、個人投資家として評価できないに等しい。
と、以上の、聞きようによっては嫌味に近いことを喋ったものだから、REIT関係者の祟りか、翌日、翌々日と風邪がひどくなってしまったのかも。

2013/10/04


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