川北英隆のブログ

今年の株価と円相場見通し

今日の日経新聞に「今年の相場見通し」があった。それを見て最初に思ったのは、「ちぐはぐな予想」というものだ。円相場が対ドルで「110円をうかがう」は控えめ、「日経平均が19000円」は強気である。
僕自身は円相場に関して「もっと円安になりそう」と思っている。以前から書いていることを変更していない。貿易収支の赤字基調が円安によって収束しそうにない。これが基本的な円ドル相場の流れを作っている。
「円安になれば輸出が回復する」とのエコノミストのありがたいお言葉もむなしいまま、時間だけが過ぎている。企業が消費地、すなわち海外での生産に力を入れているためだ。キヤノンのように国内に戻る動きもあるが、それは一眼レフカメラのような高品質のものを作っているからにすぎない。多くの企業にとって、大消費地である現地で作るのが効率的であり、その態勢も整ってきた。
もっとも、円安は今後の海外への直接投資(工場建設)を抑制するかもしれない。このため、国内資金が不足する事態は遅れる可能性が出できた。とはいえ逆に、海外への証券投資を加速し、結果として国内のドル不足と、ドル高を後押しするかもしれないが。
円安は日本経済にとってプラスなのか。貿易収支が赤字であることは、日本経済全体に対して円安がマイナスの効果をもたらすことを意味している。貿易の赤字分だけ、円安によってより多くの円が必要になるからだ。このことは、株価の足を引っ張る要因となる。
もっとも、現在は海外進出し、外・外で事業を行う企業が多くなっているから、その海外で稼いだ「純粋の海外利益」が安くなった円で評価すると「みかけの増益」をもたらす。これは株価に対してプラスの影響を生み出すだろう。それにしても、19000円とか20000円は現在よりも2割の株高である。「夢物語」とは言わないまでも、強気の予想と言わざるをえない。ポジショントークの一種かもしれない。
株式投資に関して、もう1点注意すべきなのは、海外進出して成功している企業と、そうでない企業が混在している現実である。海外進出を企業業績の評価軸とした場合、円安は企業間の格差を拡大する。つまり、株式に投資する場合、「株価の二極化を意識すべき」ということになる。手放しですべての日本株に強気になるのは問題だ。
さらに付け加えれば、日本株を買う以外に、アメリカ株をはじめとする海外株を買うこともあるのではないかと思う。日本の株価(株価上昇)は為替(円安)任せ、アメリカ経済(好況)任せである。それならもっと直接的にドルを買い、アメリカ株に投資するのが手っ取り早い。
ということで、今日の日経新聞に「何故、アメリカの株価見通しがなかったのや」と思う次第である。

追記:そうそう、円金利の見通しに関し、「日銀が国債を買い支えているから金利の上昇はたいしたことなく、それが円安要因になる」との主旨のことが書いてあったが、これは変な見方である。金利が何らかの要因で急速に上昇すれば、それは日本からの資金流出が急速に高まる兆しであり、円安の加速要因だろうと思っている。

2014/01/12


トップへ戻る