川北英隆のブログ

公的年金は100年の不作か

年金財政検証が波紋を引き起こしている。簡単に結論を書いておくと、今の政権が目指す経済再生が成功しないと、今の年金制度が破たんする。詳しくは厚労省が公表している資料を見て欲しい。
破たんと断定するのはオーバーかもしれないが、非常に明るい(チョー明るい)未来が来ないかぎり、今後も続く5年ごとの財政検証によって、公的年金は「逃げ水」のように、またはハンミョウのように去っていく。団塊の世代は、その逃げ水をうまく飲んだように思えるのだが、一生飲み続けられるかどうかは不確定だ。年金の逃げ足の方が速いかもしれないので。ちなみに、僕は団塊の世代のすぐ後だから、とりあえずは一口、飲める可能性が高い。
年金が逃げ水であれば、ますます若い世代にとって公的年金が負の財産となる。国としても抜本的な改革を講じる必要性に迫られている。では、どうすればいいのか。
現在の公的年金は、基礎年金部分(いわゆる一階部分)と、厚生年金や共済年金部分(いわゆる二階部分)によって構成されている。年金制度を改正するとすれば、この一階と二階に分けた制度改正が求められる。
一階部分について。これは国民全員に対して最低限の老後生活を保障するための制度である。所得の再配分をも目的としている。このため強制加入である(残念ながら、徹底できていないが)。このための保険料は一種の税金と考えていい。そこで今後は、この基礎年金に対する保険料が税金だと明確に位置づけ、目的税として徴収すればいい。「公的年金の保険料は税金ではない」と曖昧に言っているから徴収漏れが生じる。
もちろん、税率をどう設定するのかの検討は必要だろうが、将来の自分自身の生活のためでもあるから、生活保障を受けなければならない者を除き、一定以上の金額を納付する必要があるだろう。また、現行制度では基礎年金に対する国庫負担がある(現在の国庫の負担率は1/2)。保険料を目的税にすると同時に、この目的税で基礎年金の何割が賄えるのかを計算し、国庫負担率の見直しが必要となろう。
二階部分について。この部分は所得比例部分とも称せられている。要するに国が、「アンタらは計画的に老後に備えられへん(アホ)やろさかい、強制的に天引きして積み立てたるで」というわけだ。もちろん、給与収入から保険料が差し引かれた残りが課税所得になるとか、企業が保険料の半分を負担してくれるとか、積立金の運用益に対して税がかからないとか、年金として支払われた金額に対して年金控除があるとか、税的なメリットがある。このメリットを新たな制度としても与えた上で、報酬比例部分を廃止してはどうかと考えている。国民各々が自助努力で積み立てるわけだ。積み立てたくなければ収入を今、飲めや歌えやと使えばいい。現在の企業年金の401K部分(確定拠出年金)と基本的に同じ運営をすればいいとのことである。国が手とり足とり国民の老後の面倒を見るとの幻想は終わりにすべきであるし、国民の自立の妨げである。
この時の問題は、すでに保険料を納めた年金の権利をどうするのかである。現時点での公的年金の財政検証をベースに、可能なかぎり積立金を分配し、さらに積み立てられていない年金の権利に関しては国債で支払えばいいのではないか。こうすれば、現在描かれている報酬比例年金の相当部分が「現実のもの」となる。後は、分配を受けた者の裁量次第である。付け加えれば、「自分で運用って、どうするの」という国民もいるだろうから、その場合は資金を国が再度預かり、運用すればいい。
以上の方策を講じたならば、公的年金の安心度が高まると思うのだが。厚労省は嫌がるかな。そうかもしれないが、国民に対する公的年金への大いなる不信感に比べれば、厚労省の懸念なんて枝葉末節だと思えて仕方ない。100年安心どころか、逃げ水的な100年の不作とも言うべき年金の抜本粋な改正もしくは改廃が求められている。

2014/06/20


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