川北英隆のブログ

社外取締役2名以上という規定

日経新聞によると、東証は上場企業に対して社外取締役を2名以上選任するようにとの規則をまとめるという。2名以上選任しない場合には、その理由を示さないといけないらしい。それでどうなのか。
この措置は12月に公表されたコーポレートガバナンス・コードに基づくものである。
いつものように日経のネットでの記事ではよくわからないが、本紙を読んですぐに「そんなんでええんかいな」と思ったのは、社外取締役の定義はあいまいにしたままにすることである。要するにお友達社外取締役について、どこまでをお友達とするのか、その線引きが難しいので、目に余る場合を除き、とやかく言わないと見受けられる。経団連企業を中心とする大企業との綱引きの結果かもしれない。
それはともかく、就任した企業との利害関係の薄い社外取締役を2名以上置くとの規定について、どう評価すればいいのだろうか。一般論としては、そのとおりだと思う。多様な観点から企業経営をナビゲートし、時にはブレーキをかけることが求められる。また、複数の社外取締役がいることで、互いに協力関係が築ける。
しかし、現実の日本においては問題も多い。
最大の点は、社外取締役がアクセルとはならないことである。経営者がサボっていたとして、「サボったらあかん」とは言えるかもしれないが、「こう動け」とは言えない。僕自身の経験からしても、あまりにも経営に関する情報が少ないし、企業の経営に対して十二分な土地勘があるわけでもない。本当に企業を動かそうとすると、常駐することが必要だろう。
もう1つの問題点は、独裁政権的な企業でも、素晴らしい経営をやっている企業が存在することである。そんな企業からすれば、「社外取締役、それがどうしたんや、ゼニを食うだけで、ちっとも役にたたんやろ」となりかねない。多分、そのような企業は社外取締役を選任しない可能性が高い。
そもそも、日本企業の経営が冴えなかった最大の要因が投資家にあるわけでない。経営者そのものが良くなかったからである。
このことに関して、投資家が行動とすべきだとしてスチュワードシップ・コードが導入された。それとのセットで、社外取締役の選任を目玉とするコーポレートガバナンス・コードも導入された。しかし、これらは外堀でしかない。比喩として、隔靴掻痒がぴったしかもと思う。
本当のところ、企業経営に対する指針を政府として示せば、直接痒い所を掻けるのだろうが、そんなことをすると、「政府の運営がうまくいってるの」「アンタこそ多額の借金で潰れそうやん」と言われかねない。そんなことで、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードでお茶を濁したのかもしれない。

2015/02/22


トップへ戻る