川北英隆のブログ

トヨタの種類株は買いか2

トヨタの種類株で2回ブログを書くとは思わなかった。トヨタの株主総会がこの種類株の是非をめぐって話題になっていることは知っていた。株主総会の当日、日経の記者からメールが入った。
「種類株の件で電話していいか」とのこと。「いいよお」と「水玉れっぷう隊のアキ」風に答えたわけでないが(アキって誰やと聞かれても、吉本を見ていない者に説明するのは難しい)、総会が終わった直後に電話があった。その取材の内容は17日の日経にまとめられている。
外資系を中心にトヨタの種類株への反対が事前に報じられていた。最終的に決議に対して25%の反対があったらしい。多くは海外投資家だろうが、その海外でも反対でなかった投資家がいる。
この種類株の契約条件のベースは転換社債であり、その転換社債に議決権が付与された点が新しい。その代わりに5年間は売却できない。転換社債としての条件は公正に(外部者によるシミュレーションによって)定められる。
以上から、投資価値としては、株式よりも有利でない(ファイナンス的には等しい)。5年後にトヨタの経営がおかしくなり、倒産しているリスクは銀行預金よりも大きい。とはいえ、5年後、トヨタがこの種類株を買い取れなくなる(倒産状態に近くなる)リスクが大きいわけではないだろう。このように考えると、預金の代わりにという投資家が出てくることは十分想定できる。
この種類株の問題(発行に対する反対理由)は議決権の売買ができないこと、すなわち企業買収の対象にならないことだろう。とはいえ、普通株と比べてこの種類株の発行上限はきわめて低く(現在の発行済み株式数の4%強)、買収をとやかくいうのなら、まずは「普通株を買ってからにしたらどや」と言いたくなるくらいである。それと、それでも悔しいのなら、この種類株を買うことだってできる。また、種類株の発行の後、トヨタの業績が悪化すれば、種類株の投資家が株主総会で会社提案に対して反対票を投じることが可能であり(逆に敵対的買収提案に対して賛成票を投じることが可能であり)、その限りでガバナンスが効く。
ということで、日経には「別に発行して問題ないのでは」との主旨で答えたわけだ。

2015/06/19


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