川北英隆のブログ

記者の業績早耳情報は大問題

今日、ネットニュースを見ていたら、「そうかな」と思ったことがある。日本取引所グループの斉藤さんが、企業業績に関する事前報道に対して「それがアンフェアであるとも、良いことだとも全く思わない」と言ったという。
ブルームバーグの次のニュースである。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPYLLD6JTSE901.html
それによると、「ブルームバーグ・ニュースが昨年8月時点で日経平均株価採用の225社について調べたところ、日本経済新聞が営業利益を中心に業績観測記事を報じた45社中、37社で数値・レンジが正しいか、あるいは会社側公表の実績値に対する乖離(かいり)が10%以内に収まっていた」という。斉藤さんの発言は、この事実に関する質問に対して答えたもののようだ。そのように発言した根拠は、この企業業績の早耳情報がインサイダー取引に使われていないし、報道は自由競争だからということにある。
この点に関して、2009年11/14、2013年1/29のブログで指摘しているように、僕は問題点が多いと考えている。
たとえ事前情報がインサイダー取引に使われていないとしても、一般の投資家がそのように受け止めるのだろうか。事前に決算情報が流れ、それによって儲けている投資家がいる、それが現実の株式市場だ、いかがわしい市場だと思うのではないだろうか。
企業側も問題である。そんなに簡単に決算数値を答えていいのか。それこそインサイダー取引の温床となりかねない。そもそも記者に数字を示せるのであれば、もっと早く決算数値を公表すべきである。企業側の意識が低すぎる。
同じニュースの中で、海外証券会社のストラテジストも、日本市場の信頼性構築のために、情報開示に対する厳格な対応を主張している。市場に対する信頼の回復が、長期的な市場の発展を支える。
証券会社も、投資信託もいい加減であり、さらに詐欺に近いファンドがあり、その上に上場企業までいい加減だと思われた市場に明るい未来はない。そうだからこそ、20年間も日本の株価は低迷した(今でも1989年末の高値を抜けていない)。
投資家の信頼構築の問題は、鳴り物入りで導入されたスチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コード以前の問題ではないか。やはり鳴り物入りでディスクロージャーコードを作らないといけないのか。

2015/06/16


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