川北英隆のブログ

中国元の切り下げをどう見る

中国政府による元の小刻み切り下げが3日連続した。率は1.8%、1.6%、1.1%と続き、今日で最後だろうとのこと。昨日も書いたが、3回を合計しても小幅な切り下げである。それをあえて分けたのは中国の配慮だろう。
何に配慮したかというと、「今回のは計算基準、すなわち基準値の修正であり、切り下げではない」ことを強調したいがためだろう。とはいえ、為替レートが自由化からほど遠い現在、やはり切り下げであることに違いはない。そもそも基準値の計算根拠が明らかでない。
問題は、今回の切り下げが何を意識したものかである。今日の日経もそうだし、他のメディアのコメントを見ていても、「中国の景気が後退しているため、それへの政策的対応」と書いてあった。もちろんそうだと思うが、中国人は一般の日本人ほどアホではない。昨日のブログで書いたように、潜在的な経済成長率が低下しているとの強い認識があり、その水準へのソフトランディングを図ろうとしているとしか思えない。
現在の景気後退を放置すれば、そのままハードランディングになりかねない。それよりは、下落スピードにブレーキをかけながら、徐々に潜在成長力に接近させていくプロセスを選んだのだろう。なかなか巧みではあるが、現実においてどこまで効果があるのかは不明である。壮大な実験である。

2015/08/13


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