川北英隆のブログ

カルビー松本会長の講義を聞く

今年はあまり(まったく?)書かなかったが、京都大学での農林中金バリューインベスツ寄附講義が3年目を迎えている。前期の僕の仕事はこの講義の世話である。今年も面白い。過去2回と同様、出版を計画している。
今年、講演してもらった事業会社は、月日順に、積水ハウス、ホシザキ、大和ハウス、シスメックス、カルビーだった。過去形なのは、今日で事業会社の講義が終わったから。名前を聞いたことのない企業があれば調べてほしい。5社とも、投資家として注目するに足る。
いずれの講義も面白かった(標準語では興味深かったと言うらしいが、えらく冷めた表現である)。しかも、「おもしろかった」と読むのではなく、「おもろかった」である。
蛇足ながら、落語なんかの面白かったと同じである。心底から揺さぶられたとの意味だろう。文化的側面を重視した表現である。上司に「面白かったって何や、ふざけてる」と注意されたことがあったが、関西人ではなかったのだろう。
実のところ、今年の5社もそうだが、企業を伸ばしたトップ経営者には特有の個性がある。表現を変えれば、それぞれが異なっている。だから凡人としても安心できる。つまり、表面的な行動を物真似しても仕方ないし、「これさえ行えば大成する」という特徴もない。だから、自己流で許されるわけだ。ついでに言えば、嫌というほど出版されている「ハウツーもの」に何の意味もない。表面だけ真似ても「アホやん」だけである。
共通点があるとすれば、それぞれの経営者には信念があり、情熱があり、それを実現させるための方策と知恵(方法論)があったということだろう。
カルビーの松本氏の言葉で「そうや」と思ったのは、「会社で長時間労働しても意味がない」ということだった。一方、日本電産の永守社長は「人の3倍働け」と言っていた。
どっちを信じればいいのか。僕なりに理解するに、どちらも真実である。要するに、会社の机の前にだらだら座っていても、それをもって仕事をしているとは認められないだけである。仕事をするとは、机の前に座っていることではない。
ということは、部下を持つ上司として心がけないといけないのは、何をもって「仕事をしている」と定義する(認定する)のかである。結論から言えば、松本氏も永守氏も成果主義だと思う。成果を仕事として定義している。
では、その成果とは何か・・。上司たるもの、頭を使わないと、つまり仕組みを作らないとクビである。松本氏の仕組みは可視化(数値化)であり、それを個々の社員と契約することである。残念ながら、どのようにして契約にたどり着くのかは今日の説明になかった。(僕にとって過去の世界だが)企業のトップがまじめに考え、今後の企業の文化とすべき事項だろう。下っ端とすれば、このような工夫をしない企業に長居は無用と考えていいのではないのか。

2016/07/14


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