川北英隆のブログ

お笑いパッシブ運用は対岸か

お笑いパッシブ運用の問題は対岸の火事ではない。個人投資家がNISAなどの器を使い、ETFを利用するようになってきているからだ。
僕自身、国内株式の投資信託は、ETFを含めて買ったことがない。手数料を払うのがアホらしいので使わないだけである。
このブログを書くため、ETF一覧をざっと眺めた。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)連動型ETFの残高が多い。指数連動型という名前からある程度連想できるように、これらはパッシブ運用である。日銀が買っている金額も大きいので、個人投資家だけでどの程度買っているのかは不明ながら、残高は兆円単位になっている。株式投資の入門者にとっつきやすい投資商品であるのは確かだろう。
では、東芝がどのETFに組み込まれているのか。東芝の属性を調べると、注意印が付与されているものの東証一部上場であり、日経平均株価を構成する225社に選ばれている(依然、選ばれ続けている)。一方、鳴り物入りで登場したJPX日経400を構成する400社からは2015年8月末(つまり今回の事件が表面化して最初の、定期的な構成銘柄入替時期)に外された。
以上からすると、投資しているETFが完全パッシブ運用を目指しているのであれば、東芝はTOPIX連動型に組み込まれている。日経平均株価連動型にも組み込まれている。
東芝の事件を変だと思う個人は多いはずである。それにもかかわらず、TOPIX連動型や日経平均株価連動型ETFに投資していると、間接的に東芝に投資していることになる。
東芝が何物であれ、株価が上がればそれで満足という投資家もいるはずである。残念ながら、事件発覚時と比較すれば、株価が下落している。ちなみに、当時500円前後していた株価だが、今は300円程度である。NISAのような長期投資なら、東芝は投資対象としてふさわしくない。
では、株価指数に組み入れたり組み入れられなかったり、何で決まるのか。
TOPIXは昨日書いたように東証一部上場の全企業によって構成される。東証一部かどうか、これには上場基準があり、それに基づく。現在、東証一部から外されるには、いろいろな条件を満たさないといけない。上場企業から見ると、なかなか外されない。つまり、「緩い」となる。「こんな緩くていいのか」との声が強いのも確かである。
JPX日経400の場合、企業統治(コーポレートガバナンス)が400社に選ばれるのかどうかの1つの柱となっている。このため、ガバナンスに問題があった東芝はほぼ自動的に外されたのだろう。
日経平均株価に組み入れられている理由は不明である。名門企業であり、多分、1949年に東証が再開して以降、採用され続けていることもあろう。もう1つは、邪推かも知れないものの、東芝の社会的地位がまだ高いから、それへの配慮(流行の言葉を使うと忖度)があるのかもしれない。
お笑いパッシブ運用の問題は、単純に運用会社だけの問題ではない。株価指数とは何か、その構成や数をどうするのか、さらには株式市場への上場とは何か、これらの問題に波及する。奥が深いわけだ。

2017/06/17


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