川北英隆のブログ

トルコの通貨危機に思う

トルコの通貨、リラが危機に陥った。直接的な原因はトランプの「口撃」だが、もう少し長期で見ると、起こるべくして起こった感が強い。新興国には指導者リスクがつきまとう。
僕自身、新興国通貨のポジションを取った経験がある。南アフリカ、ブラジルだろうか。これらは失敗だった。これに対して中国は預金でポジションを取ったが、銀行が東京から撤退したため、強制的に売却させられた。おかげで正解だった(今解約とても正解なのだが)。
新興国の通貨ポジションをこの4-5年、新たに取っていない。「あかんやろな」と悟ったからである。いろんな国を旅行して思うのだが、日米欧と豪など、しっかりしている国は世界に稀有である。
しっかりしているとは、ガバナンス(国家統治の仕組み)である。たとえば、賄賂が一般的なのかどうか。時々暴露されるように、日本もアメリカも皆無ではないだろうが、新興国と比べればましだと思っていい。賄賂が横行していれば、権力から離れることが個人としての死(もしくは同等の状態)を意味する。トルコ、ロシア、ベネズエラはもちろん、隣国の権力闘争を垣間見るに、そう思わざるをえない。
そのトルコは素晴らしい国である。イスタンブールしか訪れていないが、一見(百見かな)の価値があると思う。その素晴らしい国がどうなっているのか。指導層が無能なのか、それとも個人的な権限の維持を最優先にしているのか。
長年投資をしていて、新興国が魅力的だと思ったことが数回ある。だから通貨のポジションを持った。しかし、多くは裏切られた。幸いなことに、ポートフォリオの主力を新興国に置かなかった。経済力程度のポジションで十分だと考えたからである。
本当は個人として投資した(投資しようとする)国を、できれば主要地域を定期的に訪れるのがいい。とはいえ現実には難しい。
かつて、僕は上海を定期的に訪れていたが、食事が魅力だったからである。そんな中国の企業に投資したこともあるが、それは上海での定期的な見聞を通じて「中国の発展をつぶさに観察した」からである。
要は「百聞は一見に如かず」だろう。投資の鉄則は、第一に「自分の足と目で確かめる」ことに尽きる。とはいえ、すべての投資資金を1つの企業や国に集中するのは危険である。何社か、もしくは何か国に分散させることが望ましい。
ついでに書くと、他人の口車に乗せられてはいけない。口車とは言い過ぎかもしれないが、他者の説明と個々人の投資方針とが一致することはない。自分で見聞きし、判断し、最終的に投資することが個人としての基本である。

2018/08/13


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