川北英隆のブログ

ソフトバンクの早耳情報に激怒

今日(11/12)、東証はソフトバンク携帯子会社の上場承認を公表した。超大型で、個人投資家への知名度もある。このためか、日経新聞が上場承認の早耳情報を2回も書いた。東証が公表するまで機密のはずなのに、誰が漏らすのか。関係者の程度の低さが瞭然とする。
これまでも上場に関する情報の漏洩が繰り返されてきた。日本取引所自主規制法人の審査が舞台になっている。
上場申請に対し、東証は日本取引所自主規制法人に審査を依頼する。審査依頼のあった企業のうち、大型であるか、重要度の高い場合、自主規制法人は理事会を開催し、議論し、上場を承認すべきか否かを決定する。今の新規上場企業は、自主規制法人の審査を経ている。
新聞社はこの自主規制法人の理事会の開催日と議案を嗅ぎつけ、議論や決議の内容に関する情報を得ようとする。とくに日経新聞社は株式の専門誌であるから、探る熱意が強い。
ソフトバンク携帯子会社の上場漏洩に関しては、「何でそこまで漏らし、それを書くのや」と、ある意味で激怒し、嘲笑していたので、ちゃんとファイルにしてある。そうでもしないと、すぐに忘れてしまう質なので。
僕が目にした最初の報道(日経ネット)は10/4の13.30アップだった。上場予定日まで書かれている。その内容が10/5の日経朝刊の記事となった。
その日、激怒と嘲笑のついでに、日本取引所自主規制法人の責任者に文句のメールを出した。と、10/3にロイターで海外発の英文記事が出たそうで、内容は不正確だったらしい。海外で流れたことからすれば、漏らした張本人は証券会社の可能性が高い。この記事に日経が慌てたのだろう。取引所のいろんな部署に問い合わせがあったそうだ。
この激怒が効き、呪いとなり、サウジの事件が起きたのかもしれない。その後、いろいろとあり、10/5の日経の記事の内容(東証が上場承認を11月上旬に公表するとの内容)が外れた。
次の記事が11/9の早朝2時ちょうどの日経ネットである。11/12に上場承認、12/19に上場とある。この記事、(あまり正確には書かないが)11/12の東証の公表を前にしてタイミングが良すぎるし、内容も正確だった。
その日、この記事を読んだ他の新聞社から僕に問い合わせもあった。その新聞社の記者には悪いながらも、日経の記事の内容が正しいかどうかは伝えず、むしろ「激怒している」ことを伝えた。その記者が言うには、「証券会社から漏れたのでは」と。
証券会社としては新規上場株を個人に売るため、宣伝が必要だろう。とすれば、新聞社に早耳情報を書かせ、お祭り気分に持っていくことが望ましい。
この方針、顧客のための営業を要請されている証券会社としては正しくない。そもそも、企業の重要情報を漏らすのは証券会社としての情報管理体制、リスク管理体制が疑われる。以上から、証券会社から漏れたとすれば、その証券会社の経営は失格である。株式の新規公開を取り扱う者としての適格性が怪しいから、証券会社として申請会社に対して行った経営アドバイスを再度チェックするための時間が新たに必要となりうる。
上場申請会社から漏れたのなら、その会社のガバナンス体制が疑われる。つまり、上場会社として適格かどうかの再審査が必要となり、上場をすでに承認していたとしても、その承認は少なくとも保留である。
もろん、取引所の関係者から漏れた可能性もある。その場合は、取引所のガバナンスはもちろんのこと、上場審査のため理事会に提供された情報自身にも疑いの目がいってしまう。
まとめれば、上場に関する情報漏洩が起きた場合、日本取引所自主規制法人での理事会の議論が適切に進行したのかどうか、再度チェックすることが望ましいのではないか。
僕としては、今回のような情報漏洩が起こりうることを前提とすれば、上場承認のための決議に停止条件を付けることが必要ではないかと思っている。情報漏洩があれば、上場承認を取り消す・保留する、上場予定日を変更する、上場承認の公表予定日を変更する等である。
そうすれば、少なくとも早耳情報はガセネタになる。新聞社の信用失墜間違いなしである。これで激怒が収まる。
そもそも、早耳情報に何の価値があるのか。株式の場合、インサイダー取引でお縄になるのが関の山である。「そんなむなしい記事よりも、もっと重要な記事のネタがごろごろしてるやろ」し、知る限り「いいネタをものにできる優秀な記者がいっぱいやろに」と思えてならないのだが。新聞社として、読者のためになる記事とは何なのか、もう一度考えてみたらどうだろうか。

2018/11/12


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