川北英隆のブログ

某京都中央信用金庫の凄技

銀行や信用金庫が70歳以上の老人(らしき者)に対してATMの利用を制限しようとしている。3年以上取引がない場合、ATMを利用しての取引に一定の制限が設けられつつある。
そもそもは「振り込め詐欺」対策にある。年寄りが騙されるから、警察の要請もあり、「騙されやすい高齢者の財産を守るため」という名目らしい。
少し調べたところ、「振り込め詐欺」の直接的な手段である「キャッシュカードでの振込」停止の措置をとる金融機関が多かった。もう少し踏み込み、「現金で持って来い(詐欺だから、持って来てかな)」を予防するため、70歳以上で3年以上取引していない者に対し、ATMで10万円以上の引き出しを停止する措置もあった。
最も厳しかったのが、ATMでの引き出しが(当然、振込も)できなくなる信用金庫である。それが某京都中央信用金庫だった。他にもあるかもと思うが。
「ええっ、そんなことされたらどうするんや」というところである。京都の老人は小金持ちが多い。「銀行が潰れる」騒動のとき、いろんな銀行に預金を分散させた老人がいるし、流動性をすべて現金で持った(タンス預金した)老人もいるだろう。前者の場合、3年間預金をほったらかしにしている可能性が高い。
その預金のATMでの引き出しを停止するなんて、ある意味で新手の商売かもしれない。そのうちに年寄りが本当にボケてしまい、相当の預金残高があったことを忘れてしまう可能性が高い。しかも、その老人の死後、相続人がそんな預金のことに気づかなかったとしよう。と、今の法律ではすべてが国庫に入る。
もしくは、しっかりした70歳なら、「ATMで自分の預金引き出せないなんて、何のために銀行や信金があるんや」となり、全額を引き出し、口座を解約するかもしれない。これもまた、今の銀行や信金の思う壺である。
というのも、ゼロ金利、マイナス金利で「預金がもっと欲しい」とは金融機関の誰も思っていない。ババ抜き/ジジ抜きゲームではないが、預金を引き出してほしいという金融機関がほとんどだろう。とくに小口預金は金融機関にとってカスである。つまり、何も取引してくれない個人なんて、「迷惑千万」と思っている銀行や信金が多いはずである。それをかなり露骨に表現したのか某京都中央信用金庫だろう。
思うに、預金者としてそこで本気で怒ってはいけない。預金のすべてを引き出すのは諦めることである。口座の解約には時間がかかり、無駄だから。
そこで、手順1として、ATMで残高の確認をする。手順2、窓口で預金を引き出す。手順3、ただし引き出した後に1円だけ残るようにする。これで、銀行や信金の戦略どおりに動かなくてすむ。
残念ながら、預金利息が付けられる時期でないのなら、きちんと1円だけ残るようにはできない。でも、何百万という預金がない限り、昨今、1円の利息も付かないだろう(今の利率、馬鹿らしくて計算する気もおきないが)。とすれば、1円だけ残して引き出したとしても、もう1円くらいの利息の被害ですむことがほとんどである。
フィデューシャリー・デューティ(顧客に対する信認義務)が叫ばれている現在、70歳以上に対するATMの利用制限とは何なのか。金融庁がどう判断しているのか。
老人がボケてくるのは当然なのに、その金融取引を制限して対応しようという措置が本当のフィデューシャリー・デューティなのか。老人は財産を現金で持てということなのか。キャッシュレスの勧めと相反している。泥棒も商売繁盛、大喜びである。金融機関の責任転嫁としか思えない。
そう言えば、某京都中央信用金庫、「マル暴でないことを自分で証明しろ」という金融機関である。「変なの」、「そんなヤツおらんで」としか思えない。

2019/05/09


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