川北英隆のブログ

株式投資の配当は損

今年の9月末、正確には27日、株価は「配当の権利落ち」で大きく下がったとか。配当の権利落ちとは、久しぶりに聞く用語のように思う。「それ、何」と思う場合はネットで調べてほしいが、簡単に説明しておく。
株式の場合、特定の日の株主名簿に記載された者に対してのみ、いろんな権利が付与される。配当を受け取る権利もその1つである。そこで、決算期末などの特定の日、株主を確定するために株主名簿が一時的に閉じられる。日本の場合は3月を決算期末とする企業が多く、その場合、3月末の株主名簿に載っている株主に対して配当が支払われる。また、その決算期の中間期末すなわち9月末に中間配当を支払う企業もある。その場合は9月末の株主名簿に基づく。
株主名簿に3月末や9月末に掲載されるためには、当然ながら、実際に株主になっていなければならない。しかも日本の場合、株式の買い注文が執行されても(つまり市場で株式を買えても)、実際に株式の受け渡しがなされるのは2営業日後(取引当日を含めて3営業目)である。
この慣行によると、今年の9月末の株主名簿に名前を載せてもらうための最終取引日は9/26である。翌日の9/27に買ったのでは9月末の名簿に載らない。カレンダーで確認してほしい。このため、9/26と比べて9/27の買いでは「配当の分だけ(正確には期待される配当の分だけ)損」なので、その損の分だけ理論的に株価は下落する。これが配当落ちである。
簡単にと言いつつ、長くなった。
では、本当のところ、配当は大切なのか。大切でないとは言わないものの、それが一番重要だとは考えられない
そもそも。配当がない企業、すなわち無配の企業は投資家から見て「ダメ企業」なのだろうか。日本ではそういうラベルが張られているが、実のところ無配の企業は、素晴らしいかダメかの両極端である。
というのも、アマゾンやグーグル(アルファベット)は、すごく儲かっているのに無配である。マイクロソフトもアップルも、大儲けしていたのに無配の時代が最近まであった。
何故なのか。儲かっているのに無配の企業は、「配当として支払うよりも、それを成長投資に充当したほうがはるかにいい」と考えている。成長し、それによって株価が上がることが株主のためになり、配当よりもはるかに望ましいとの考え方である。理論的には正しい。
問題があるとすれば、本当に儲かる成長の機会が見つかる(ある)のか、成長の機会があったとして経営者がそれを十分に活かせるのかだろう。
マイクロソフトやアップルは、儲けのすべてを投下するような成長機会がないとして、儲けの一定割合を株主に配当などで還元を始めた。この実例からするに、日本企業の場合、黒字であるのに無配の企業がない。これらの企業は、投資機会がないほどに儲けているのだろうか。
この点、残念ながら、日本企業で投資機会の大きさを数値として把握できている企業が少ないのだろう。このため、「黒字だし、よくわからないから、とりあえず他社並みに配当しておこうかな」との企業が多いはずである。
投資家としても、とくに個人の場合、配当をもらうと源泉課税がある。株価が値上がりした場合、売却して益を確定しないかぎり課税がないので、いつまでも税金の繰り延べが可能である。
もちろん、成長機会を活かせ、企業の利益が増えて株価が上昇するというのは、将来への「期待」でしかなく、確定するかどうかは定まらない。経営者の能力と、株価という市場全体の環境次第でもある。言い換えれば、不確実である。そんな不確実な株価上昇よりも、とりあえず配当をもらい現金を確保するのが正しいという意見もある。
配当か値上がり益か、どちらを取るのかは個人の判断だとの要素が大きい。老人のように、とりあえずの現金という選択肢もありうる。とはいえ、長期の投資を前提にすれば、株価が利益に比例すると考えて大きな間違いがないはずだし、上で述べたように配当は税金の分だけ目減りする。
僕としては「配当なんてどうでもいい、値上がりしてくれや」の方を選択したい。現金が必要なら、株式の一部を売却すればいいわけだし。

2019/09/30


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