川北英隆のブログ

内弁慶な日本企業

1/13の日経新聞の7面、「自動車一極集中の危うさ」を読み、思ったことが、このブログの表題である。記事には、日本の産業構造の中で電機・電子・情報通信が後退し、自動車が突出したとある。その状況に困っている日本企業があるとか。
困っている日本企業とはどこか。記事には日本製鉄の名があった。他の高炉メーカーも同じだろう。
日本製鉄をはじめとする高炉メーカーは近代日本の歴史の立役者として登場し、戦後の経済発展をも支えた。だから名門の誉が高い。経済団体のトップも務めてきた。
父親も高炉メーカーの株式を相当保有していた。売却して亡くなったが。
現在、高炉メーカーは日本国内で利益を稼げていない。株価も冴えず、日本製鉄の時価総額は1.5兆円しかない。日本企業での順位を調べたところ92位らしい(ヤフーファイナンス)。他の高炉メーカーの時価総額は1兆円に達していない。隔世の感がある。
記事では、その日本製鉄、電機向けが縮小した結果(造船も消えつつあるし)、国内の販路がトヨタなどの自動車メーカーに偏り(半分に達しているとか)、価格交渉で圧敗しているとか。これが国内で儲からない直接の要因である。
でも、圧敗しているのはトヨタのせいでも、電機や造船のせいでもない。日本製鉄が海外市場を開拓してこなかったからにすぎない。要するに、国内での力と名声にあぐらをかいてきたせいであり、自ら国内の需給バランスを崩したのである。
内弁慶だったとも言える。海外に出ると、国内ほどの力も名声もない。
サラリーマンは「失敗」を恐れる。失敗は失点であり、出世の道を閉ざされかねない。成功しても「わが社の力からして当たり前かな」と、これまた内弁慶な経営者に思われ、大して褒められない。とすれば、リスクのある海外を避け、内にこもって威張っていたほうがいいに決まっている。とすれば、「海外に行きましょう」なんて変に口走らないのがいいに決まっている。
京都企業の例を出すまでもなく、日本の製造業の軸足は海外に移った。売上高の半分以上は海外という企業が普通である。京都企業はさらに海外比率が高い。一方の日本製鉄は34%とある。国内での力にすがり、海外に打って出るのが遅れた証拠である。かつて世界一の製鉄会社だったことからすれば、大変惜しいのだが。
もっとも、栄枯盛衰は世の常でもあり、日本製鉄にかぎらない。とは言いながら、世界を見渡すと頑張っている企業もある。世の中の流れと、その中での自分の位置を見極め、それでどうするのか判断し、行動する。生き残りたいのなら大きなリスクも取る。とりあえずの教訓である。というか、当たり前のことにすぎないのだが。

2020/01/14


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