川北英隆のブログ

バーチャルの長所と短所

オンライン会議を含めたバーチャルは便利である。これを使わないなんて「アホ」だと思う。私的なことだが、会議のために東京に出かけることも激減した。東京の空気に触れられないのは残念な一方で、往復6時間少しの時間の節約になるうえに、疲れも残らない。
実際に体を動かさないといけない作業はともかくも、知った間柄で行う通常の会議や打ち合わせであればバーチャルで十分である。
海外との打ち合わせもバーチャルが便利だと聞いた。経験上、会議で外人の参加を得たい時も、バーチャルなら比較的簡単に設定できる。京都と東京の間と異なり、それこそ時差を乗り越え、体力を使い、高い航空運賃を支払って、しかも事故の危険を感じながら移動する必然性は高くない。これに関連して、「海外との意見交換はコロナさまさま」だと知り合いが語っていた。
とはいえ、バーチャルには問題もある。リアルにある大きな利点が欠如する。音楽をCDで聴くのと生で聴くのとの差だと言えば理解しやすいだろうか。
横道だが、僕は音楽の趣味がほとんどない(あえて言えば、今もCDをバックグラウンドでかけながらワープロを打っているが)。山歩きのハイライトを映像で見るとの、実際に対面するのとの差だと言ったほうが僕の実感に近いものの、この表現を万人に理解してもらえるとは思わない。
元に戻り、たとえば就職活動での会社訪問である。学生には難しい注文ながら、いくつも企業を訪問することで、社風を相互比較できる。形式を重んじているのか、実質なのか。社員が闊達なのか、死んでいるに近いのか。僕の意見としては、受付の態度や行動1つで、その企業の特徴が浮かび上がると思っている。バーチャルではこれを実感できない。よく出向いている企業であっても、年に1回程度は実際に出向き、建物に入った空気感、受付、よく会っている相手の雰囲気や態度が変化していないかどうかなど、知ることも重要だろう。
山歩きを取り上げると、ハイライトの景色は、その前の苦労があるから一層ハイライトになる。バーチャルに(この場合は映像に)感動したところで、所詮はそれだけである。途中の苦労を抜きにしても、ハイライトの風景を周りと比較し、さらには周りの風景から得られる高度感や色彩の差など、それらを総合することで一段と充実した感覚が得られる。ひょっとして「意外にしょうもないな」かもしれないわけだし。
これに関連して思うのはバーチャルによく登場する残酷なシーンである。そこからは痛みが得られない。相手を傷つけるにしても、こちらにも何らかの痛みが降りかかる。一人っ子で喧嘩をしたことがなければ、また勉強に忙しくて友達と取っ組み合いをしたことがなければ、相手を殴り、傷つけることが何なのかを十分理解できないだろう。
バーチャルはリアルがあってこそ成立する。バーチャルだけのバーチャルとは「嘘」でしかないと思っている。

2021/08/17


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