川北英隆のブログ

需要政策よりも供給政策を

選挙に勝った与党は、コロナで弱った国内経済の対策を打ち出そうとしている。報道によると、その中には「18歳以下の子供に1人当たり10万円相当を支給する」というのがある。公明党が公約に掲げていた案だ。総額2兆円が必要とか。「変なの」と思ってしまう。
もちろんコロナで困窮している世帯に現金を支給することの意義を完全に否定するものではない。逆に言えば、困窮度を認定した上で現金を支給するのなら、まだ許せる。しかし今の日本政府に困窮度を正しく認定できる仕組み(例えば自営業者の所得をかなりの精度で把握できる仕組み)がない。
もう1つの問題は、昨年の10万円でも同じ議論になったように、「配った現金を本当に使ってもらえるのかどうか」である。10万円を支給するのには、それを使ってもらい、コロナで打撃を受けた業者、代表的には飲食業者や旅行業者を助けようとの意図が込められている。需要喚起である。かつての公共工事と同じ狙いである。
しかし、昨年の10万円で見られたのは、その多くが貯金に回るだけとの現実である。コロナの感染が心配だから10万円が使われなかったとも考えられる。それでは今回の10万円は、「コロナ感染の心配がなくなった」から使ってもらえるのだろうか。
足元のヨーロッパでは感染者数が急増している。ワクチン接種が進んだからといって安心できないというのが、正直なところだろう。とすれば、やはり10万円は使われないかもしれない。一方、使ってもらえたならば、それによってコロナの感染者数が急増しかねない。一種のジレンマである。
正しい政策とは何か。それは困窮対策や需要対策を突出させるのではなく、供給対策をきちんと打ち出し、総合的な対応にすることである。
困窮対策や需要対策は短期的な政策である。これに対して供給対策は中長期的な対策である。日本はこの中長期的な対策が貧弱との印象を強く受ける。
供給対策を含めた中長期的な対策として何が求められるのか。いろいろあるだろうが、ここでは思いつくものを指摘しておく。
1つは毎回書いている医療体制の充実と高度化である。医療倫理とは言わないまでも、デジタル化を含めた医師の再教育が必要かもしれない。毎回書いているので、これ以上は書かない。
2つに、ワクチンやコロナ治療薬の開発や製造に対する支援である。この点、日本では遅々として進んでいないように感じて仕方ない。厚労省を含めた関連業界における人材の集中、相互の積極的な情報交換、研究開発や設備投資に対する政府補助などを積極果敢に進めないといけない。そうでないのなら、コロナが一朝一夕に収束しないことが明らかになった現在、日本は他国への依存を続けるだけの、つまり口を開いて待つだけの後進国に成り果てかねない。
3つに、密を避けるためにも、企業や居住地の分散化を図るべきである。地方に移転した企業には補助金を与えればいい。もしくは税率を期間限定で低くすればいい。企業の移転にともなって転居する従業員が新たに住居を手当てした場合には、住宅ローン減税を厚くするか、所得税を軽減すればいい。
この居住地の分散は地震、台風、火山爆発への対策にもなる。流行りのサプライチェーンの確保であるし、今まで建設してきた高速道路や新幹線の活用にもなる。地方活性化にも役立つ。一石二鳥、三鳥、四鳥、それ以上というわけだ。
いずれにせよ、何兆円もの現金を誰彼なしにばらまくのではなく、目標と効果を目定めた政策を打ち出すべきである。2年間近くコロナで学んできた政府であれば、もっと多くの中長期的に必要な供給政策が思い浮かぶはずだと信じている。

2021/11/06


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