川北英隆のブログ

危うさ回避が債券投資の鉄則

ウクライナでの戦争が予想どおり生じ、西側はロシアに制裁を課した。最悪を想定するに、ウクライナ大統領の首の挿げ替えまで進むとして、ロシアへの制裁はさらに加えられるだろう。全面戦争にはなりそうにもないものの、制裁による証券投資への被害が生じる。
かつてロシア株ファンドに投資していたことがある。BRICs(Brazil, Russia, India, China)が将来発展するとして、もて囃された時代である。一時はかなり値上がりしたが、そのうち失速した。結局は損切りしたと記憶している。リーマンショックに遭遇したのが直接の原因だった。間接的には、資源や農業以外のロシアの民間経済活動が育たなかった。
現状、かつてBRICsと呼ばれた国のうち、個人の投資対象となるのはどこなのか。ブラジルとインドの個別企業程度だと思っている。国には、つまり国債には投資しないのが個人として正しいだろう。
思うに、ブラジルとインドの場合、前者には資源、後者には技術と人口増という魅力がある。企業活動の自由度も高い。とすれば、株式投資において魅力的な企業が点在しているはず。
一方、国債の場合は政治的、経済政策的な危うさ、つまり潜在リスクを常に考えなければならない。株式や債券は資本主義の骨格をなしている。BRICsの場合、まだその骨格が形成されていない。
ロシアでは、その潜在的なリスクが爆発した。隣国の国境を越えて軍事行動を起こす言い分があるとしても、現在の資本主義では到底考えられない。この点から逆算してみるに、状況を機敏に評価、判断できない個人投資家にとって、ロシアの株式や債券に投資するのは無謀である。
今日の日経新聞を見ていると、そんな中、ロシア国債に投資していた債券ファンド(投資信託)があるという。多くは新興国の債券に広く投資するものだが、中にはロシアの債券に集中投資するものもあるとか。要するに「日本がゼロ金利なのに対して、高金利が稼げて儲かりまっせ」との理屈で個人投資家を募ったのだろう。
僕自身、BRICsやその他の新興国の債券には原則として投資しない。通貨も同じである。例外的に投資して大損した経験はあるのだが、今回は述べない。
新興国の債券が高金利であるのは事実である。しかし高金利であるのは、先に述べた政治的、経済政策的な潜在リスクを反映している。しかも債券の場合、株式と異なり、新興国の将来の経済成長率の高さを享受できない。リスクが大きい割にリターンが小さいと表現していい。
ついでに書くと、新興国の通貨をからめた債券(いわゆる仕組債)が多く発行されている。これには新興国に関するリスクに加え、「販売する証券会社にとって大儲けの手数料」が組み込まれている。個人投資家として、これも当然「堪忍や」だ。
いずれにせよ、BRICsをはじめとする新興国の債券には、それがファンド形態であれ、近寄らないのが正当である。投資すれば、どこかでワナにかかってしまうだろう。

2022/02/25


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