恐羅漢(おそらかん)山と寂地(じゃくち)山を歩いてきた。2つは中国地方西部の山である。このうち恐羅漢山(1346m)は広島県と島根県の、寂地山(1337m)は島根県と山口県のそれぞれ県境に位置し、寂地山は直線距離で恐羅漢山の約16キロ南西にある。
もう少し書くと、寂地山のすぐ西は、昔の安芸(広島県の西部)、石見(島根県の西部)、周防(山口県の東部)の三国境になっている。
どう行くのか。今回はツアーに参加した。広島駅に全参加者が集合し、ツアー会社のバスで広島市を流れる河川、太田川沿いの道を山間部に入った。1泊2日の山旅だった。宿泊は広島県廿日市市吉和地区にあるスキー場用のホテルだった。
スキー場からわかるように、この県境の山々には雪が多いらしい。日本海に面しているからなのだが、関西人にとっては「言われてわかる」程度だろう。そんなに高い山ではないから、雪があるとは思いもしなかった。
そもそも山がどこにあるのか、普通はすぐに思い浮かべられない。でも僕にとって、恐羅漢は以前から知っていた。きっかけは1997年の広島出張だった。堅気のサラリーマンだった時代、その年の3月までニッセイ基礎研究所にいて、4月から債券投資の担当になったからか、広島支社で講演を依頼された。11月21日、金曜日だった。
「翌日は土曜日で休み」と思うと、「ついでに山歩き」となる。地図を見て目に飛び込んだのが恐羅漢という、いかにも挑発する名だったと思う。しかし山奥にある。「どういくのか」ともう少し見ると、近くに三段峡という(当時は切手にもなり)有名な峡谷がある。調べると広島からバスが出ている。「行けるかな」と思い、計画した。
とはいえ恐羅漢は三段峡からさらに奥にある。広島から日帰りできるかどうか自信が持てなかった。しかも金曜日に講演を終え、翌日の天気を確認すると今一つだった。「まあいいか、次にも機会があるやろし」と諦めた。これを書きながらネットで確認すると、広島の11月21日は曇後雨、22日は雨後曇とある。
しかも続きがある。24日に山一證券が経営破綻し、自主廃業を公表した。この前々日、つまり恐羅漢山に登る予定の日に、山一證券の経営破綻の噂が急速に高まったと記憶している。債券の担当だったから、のんびり山に歩いている場合ではなかったことになる。最初に恐羅漢山を計画した日は、蓋を開けると天気も雨、サラリーマン生活も雨だったわけだ。
その恐羅漢山の名を昨年11月、ツアー会社の予定表に見つけ、「これは登らないと」となった。それで、最初の計画から27年半も経った日の天気は・・、雲一つない快晴だった。
写真、上はスキー場から見た恐羅漢山である。スキー場が山頂手前まで延びている。下は寂地山である。下山しつつ撮ったのでピークを間違えた。よく見えている三角のピークではなく、その左の松の枝に隠れ気味の丸いピークである。
2025/04/28