カイラス山、もしくはカン・リンポチェはチベットの西南の奥に位置している。ネパールやインドに近い。標高は諸説あるものの6650m前後、広義のヒマラヤの山としては高くない。しかし独立した雪山であり、鈍角的?に尖っている。だから聖山として崇められてきた。
カイラスはチベット仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教(仏教と同様、ヒンドゥー教がベース)、ボン教(チベット地域の原始宗教)の聖地である。それと軌を一にするかのように、カイラス周辺はインダス川、サトレジ川(インダス川の最大級の支流)、ヤルツァンポ川(チベット南部を西から東へと流れ、ヒマラヤ山脈東部を横断してベンガル湾の手前でガンジス川と合流)、カルナリ川(ガンジス川の支流)の源流地域でもある。
そのカイラスを仏教の慣習にしたがって時計回りに歩いてきた。いわゆるカイラス巡礼である。
現在、チベット旅行には制限がある。フリーに入ることは許されず、少なくともガイドを付けなければならない。これを考えると、手続きや費用の観点から、ツアーに参加するのが簡便である。そこまで深くは考えなかったが。
ルートはどうなるのか。まずはチベットの中心部、ラサに入る。今回のツアーでは、成田発、西安(かつての中国の都)行きの飛行機だった。西安で1泊の後、翌朝の飛行機でラサに入る。西安は標高400m程度、ラサの中心部は3700mくらいある。何回かの経験によると、ラサ程度の高度にいきなり達すると頭がくらくらする。つまり高山病的な症状に襲われる。そこでラサ2泊し、高度順応した。幸い、ポタラ宮殿、大照寺(ジョカン)など見るべき場所がたくさんある。
その後は陸路(バス)での移動だった。やはり高度順応のためなのだが、では飛行機があるのかといえば、それは特殊な事情でしか許可が出ないのだろう。高度3920mのシガツェ、高度4525mのサガを経て、カイラス南麓の町、タルチェン(大金)に着いた。標高4675mとされる。
翌日の足慣らしの後、2泊してカイラスを巡った。もう少し書くと、まずは5210m地点の宿泊施設に泊まりつつ、カイラスの北に位置する標高5688mのドルマ峠を越えれば難関突破である。その後、4810m地点の宿泊施設に泊まり、翌日にタルチェンに戻った。
このカイラス巡りは延長50キロあるとされる。それを3日かけて歩くのだから、1日当たりにすれば大したことはないし、高度差も1000m程度に過ぎない。歩いて実感したところ道も整備されている。とはいえそもそもの高度が半端ではない。たとえればキリマンジャロの山頂部付近を歩くようなものである。だから慣れていないと高度障害が出てきてしまう。
ついでに帰りはといえば、往路をバスで戻る。これがまた長い。帰りだから気合が抜けているため、疲れがどどっと出た。
写真はカイラスへの入口、ラサのポタラ宮とジョカンである。最初に訪れた1999年、「ついに来た」と感動したのを覚えている。今は慣れなのか、観光地化したためなのか、これといった印象もない。
ついでに少し長いが中国の地図もアップしておく。西端にあるカイラスの南はネパールの西端に位置し、インドとも接している。
2025/06/06