長く生きていると、知人の様々な情報が伝わってくる。その1つが債券アナリストもしくはエコノミストとして活躍した上野泰也氏の退職である。
この6月末で退職、7月以降は独立して引き続きエコノミストとして情報発信すると書いてあった。その通り、今日(7/3)のReutersの日本語版に日銀の利上げに関するオピニオンが掲載されていた。
上野氏と最初に会ったのは僕が堅気のサラリーマンだった時である。古い手帳が手元にないので確認できないが、1995年か96年だと思う。QUICK社が公社債市場関係者を対象にアンケート調査をしようということになり、その調査項目のうちのトピックス(特別調査項目)を毎月協議した。そのメンバーとして上野氏や僕が加わった。座長として、当時はまだ住友信託銀行に勤務していた浅野幸宏氏がいたことも思い出した。
当時の上野氏は富士銀行の調査部門の在籍だった思う。2000年にみずほ証券が設立され、転籍したとある。
僕は日本的なエコノミストが好きでない。特に今のエコノミストの書いたものには、「明日、日銀はこう動く」的なものが多い。日銀が常に正しく動くはずもなく、とりわけ長期的な見誤りをするから、「そんな日銀の一挙手一投足を予測したところで大した意味がない」と思っている。「それよりも日本経済、世界経済の現状をできるだけ客観的に観察し、その評価をしたらどうや」である。
そんな中、上野氏の書いたものは興味深かった。みずほ証券の縁から、僕は上野氏の書き物を毎日読めた。もちろん上野氏とてエコノミストとして債券部門の調査担当だったから、明日の日銀を書くこともあった。しかし多くは、様々な視点から日本経済や世界経済を観察するものだった。しかも簡潔に1ページで述べていた。
そんな上野氏的な、本当の意味でのエコノミストが一線を退くのは残念である。とはいえ上野氏が完全に活動を停止したわけでない。メディアに登場するのを待望したい。
2025/07/03