川北英隆のブログ

トリグラウ途中の小屋へ

ブレッド湖のホテルでは荷物を仕分けした。観光用の荷物と山歩き用の荷物である。観光用はホテルに預け、山用は自分で山小屋まで上げる。さらに山小屋まで運んだ荷物は、そこで小屋で山頂までの荷物と、とりあえず置いていく荷物に仕分けする。
前年のギリシャでは荷物をロバが山小屋まで運んでくれたが、スロベニアでは人力である。スロベニアはヨーロッパでも早い段階で国立公園が設置された。それだけ環境に配慮して先進国のようだ。
トリグラウはスロベニア国民にとって1回は登るべき山とされるため、ロープウェイ設置などの計画もあったそうだが、自然保護が優先され、実現していない。そうそう、トリグラウへのアプローチは途中に岩場があり、ロバで運ぶことは難しいのだろう。
ツアーには現地の山岳ガイドが加わった。ツベートさんといい、日本人と結婚している。その日本人女性もスロベニアでガイドをしている。最初はその2人が同行してくれた。
ブレッド湖から車を使って1時間ほどで登山口のポクリュカに着く。普通はここに駐車をして登山開始しなのだが、我々の車はもう少し奥まで入った。作業用の車道が小さな尾根を南側で巻き、ポクリュカの西側まで続く。そこまで入れば、尾根越えを避けられる。
奥まで入った登山口では林業の作業が行われていた。倒れた木の処理のためだとかで、林業用のトラクターが動いていた。この登山口から林の中をゆっくりと登る。林を抜ければ放牧地だった。牧畜用の小屋が点在し、その権利者のための車道もあった。
放牧地から先は登山道である。小さな峠を越えると、圏谷に広がるお花畑に出た。そこを西に折れ、圏谷を詰めて標高1892mの峠を越える。エーデルワイスのほか、様々な高山植物が咲いていた。
峠を下り、2200m級の岩稜を南へと巻くように進む。南側に放牧地が現れる。最初の放牧地と同様、山裾は木が伐採されていて草が育つので、酪農家が夏に牛を連れて上がるらしい。牛の糞が登山道の所々に落ちていた。
巻き道には所々岩場がある。石灰岩質であり、よく踏まれていない限り滑らない。しかも道がしっかりと整備されている。そんな岩場にトリグラウの固有種だとされるZois' bellflower(ゾイス・キキョウ)が咲いていた。普通のキキョウと異なり、花の先がすぼむ種である。ゾイスとは発見者の名前らしい。
稜線の南端を巻き終えて道が北に向くと、トリグラウ方面と、その南下にあるブラニカ小屋が見えてくる。左手下の広い谷間には森と草原が広がり、牛の姿も見えた。
少し下り気味に歩き、その日に泊まるヴォドニコウ小屋に着いた。小屋のすぐ横に水場があり、トリグラウ山頂付近も下の谷も見える快適に小屋だった。今回の山小屋はすべてそうだが、ほぼ満足のいく食事が付き、ベッドと乾いた布団がある。飲水は、湧き水の小屋と、ミネラルウォーターを買わなければならない小屋とに分かれている。
写真、上はヴォドニコウ小屋(中央右)と奥のトリグラウ、下はZois' bellflowerである。
20250722ヴォドニコウ小屋とトリグラウ.jpg

20250722ゾイスキキョウ.jpg

2025/07/22


トップへ戻る