トリグラウ登頂は「これしかない時間帯」、つまり夜明けから3時間程度の晴れ間にぴったりとはまった。前日に登っていれば雷と雪に遭遇し、危険だった。かといって当日、少しゆっくりと出発していたのなら、霧の中の登頂となっただろう。
客観的には現地ガイドの判断が素晴らしかったことになる。しかし主観的には奇跡が生じ、それが続く旅行だった。中高の同級生に偶然出会い、しかもスロベニアでの初日の昼食時にたまたま近くの席に座った女性が同窓生だったため、11名のツアー参加者のうちの3人も同じ中高の卒業生だと判明した奇跡が、トリグラウ登頂まで持続したことになる。
そうそう、書き忘れていたが、僕がアンザイレンしたのは、その同窓生の3人だった。現地ガイドがどういうわけかKY君と僕とを指名した(これもまた奇跡か)。「もう1人は女性」となり、それならと同窓生KDさんに声をかけた結果である。
そんなことで盛り上がりつつ、トリグラウの肩の小屋(クレダリッツア小屋)に預けていた荷物を受け取り、下山を始めた。下山といっても当日と翌日、別の2つの山小屋で泊まり、トリグラウ山塊のハイキングを楽しむことになっている。
クレダリッツア小屋からはしばらく往路を下り、すぐの分岐を右にとってトリグラウの南尾根を回り込む。ここで現地ガイドの奥さんと分かれた。
ガレた道が、最後は岩場をトラバースするようになり、それが終わると小トリグラウの南西側に建つプラニカ小屋に着く。小屋はちょっとした平地に建てられている。標高2401m、肩の小屋より低いため、現地ガイドに言わせるとクレダリッツア小屋から登るよりもハードだとのこと。
プラニカ小屋は少し遅めの昼食をとり、下山を続けた。下るにつれて石灰岩地帯特有のカルスト地形が明瞭になり、とくにドリーネ(陥没した穴)などの窪地が目立つ。大きな草原(ドリーネよりも大きはウバーレか)に下り、そこから少し登り、その後はアップダウンの繰り返しだった。岩場のトラバースが複数箇所あった。
途中でアイベックスを見た。角が大きい。なおヨーロッパアルプスにはアイベックスよりも角の短いシャモアがいて、これは翌日に見かけた。ともにヤギに近い動物である。
当日の終わりは霧の中になった。登り気味の道になり、大きな分岐に着く。それを直進すると、すぐに宿泊するドリッチ小屋だった。標高2151mにある。
小屋の水は天水で洗面用にちょろちょろ出る程度、トイレは小屋とは別の小さな建物にあって和式だった。飲水はミネラルウォーターを買うことになる。
写真、上はトラバースする岩場の手前から見たプラニカ小屋、上空には薄いながらも雲がかかっている。下はアイベックス(スマホの望遠で撮ったため、ピンボケ気味)である。
2025/07/23