川北英隆のブログ

木に竹を接ぐ経済政策

日本の経済政策は矛盾の連続である。特定の現象だけを追いかけ、本質を顧みないとも表現できる。役所が自分の縄張りのことしか考えないから、複数の役所の政策が喧嘩状態、矛盾状態になる。
一番身近な事例は物価だろう。日銀は消費者物価指数の2%上昇を目指し、マイナス金利をはじめ、超がいくつも付く金融緩和政策の採用を続けてきた。それにようやく反応するように物価が上昇したため、日銀は経済が正常化してきたと金利を引き上げてきている。
これに対して先の参議院選挙では、物価の上昇が国民生活を苦しくしているとして、野党は減税を掲げ、与党である自民党は給付金を掲げた。ということは、物価上昇は経済の正常化ではなく、悪化だと評価していることになる。少なくとも政府の政策を担っている自民党と、その政府と意見交換しているはずの日銀との間に、物価上昇に対する大きな評価の食い違いが生じたことになる。
国民からすれば「どうなってるんや」だ。詳しくは書かないが、物価上昇をもたらした急激な円安や足元でのコメの値段の暴騰に対する意識や認識に食い違いがある。
もう1つ事例は老齢化や人口減少にともなう労働力不足への対応である。政府は女性や老人を労働力として駆り出そうとしている。老人はともかくとして(正直のとこ、猫の手程度にしか役立たないと思うが)、女性を労働力として使うのは少子化対策や教育政策と矛盾をきたす。というのも、子どもを正しく育てるには、両親のうちの少なくとも片方がそばにいるべきだから。
保育園に預け、もしくは鍵っ子にするのは、僕の経験上、正しい教育とならない。しかも両親が片道1時間、1.5時間と通勤をし、家に帰ってから子どもの面倒を見るのは過重労働である。職場での残業規制を厳しく制限してきた政策と、遠距離通勤の後、家に帰ってから子どもの面倒を見るという現実とが矛盾なく成立するはずもない。矛盾なく成立させるには、子どもの世話を放棄しなければならない。と、子どもの虐待だと言われかねない。「どうすりゃいいのさ」である。
これらの政策から矛盾や齟齬をなくすには、職住近接を図ることだろう。これを徹底するには通勤時間規制が必要かもしれない。もしくは東京を代表として、都市部に本社機能を持つ大企業に対して課徴金を徴求する一方、それを財源として都市部の住居や学校に補助金を支給することを考えていいかもしれない。
もう1つ考えられる政策は、最低賃金を思いっきり上げることである。そうすれば両親のうち、片方が働くだけで生活できるようになるだろう。企業側は、高い賃金を払うために生産性を引き上げようと投資を活発化させ、グローバルな競争力を高めるだろう。生産性向上のための投資資金が不足する企業には、政府が補助金を出せばいい。
いずれにしても、政府の政策に必要なのは、視野を広くして考えることである。そうすれば政策間の矛盾が回避できる。

2025/07/28


トップへ戻る