お盆が近づいた。新幹線は帰省ラッシュである。しかも今年は猛暑転じて大雨により、ダイヤが混乱している。そんなニュースで思うのは、「多様性を謳うのに、このお盆の帰省ラッシュの超単純さ」だ。この超単純さに政府も悪乗りし、2014年に「山の日」を新設した。
夏だけが山の季節ではない。それなのに8月11日を山の日と定めた政府、「アホ違い(ちゃい)まんな、パーでんな」と、明石家さんま風に思ってしまう。
お盆休みを長くし、帰省などの旅行を計画しやすくするためだとすれば、インバウンド同様、鉄道会社をはじめ旅行関係業者の利益増大を狙ったものと考えていい。当時から人口減少と人手不足が懸念されていたのに、国民の人気取りを狙って仕事日の削減を図ったものでもある。
祝日は法律で制定できる。「国民の祝日に関する法律」である。山の日について、その法律には「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」と書かれている。日本の山の荒れようを見るに、「感謝、ほんまかいな」と思う。
世界を見渡すと、日本の祝日の日数は非常に多い。グーグルGeminiに質問したところ、日本の16日に対し、イギリス(イングランド、ウェールズ)8日、ドイツ9日、アメリカ(連邦政府)とフランス11日、イタリア12日とあった。
当然ながら、欧米各国が「働くの大好き」なわけでない。有給休暇をしっかりと消化していると考えていい。つまり国のお仕着せ休暇は最小限にし、個性豊かに休んでいる。
日本も欧米を見習うことで、帰省ラッシュを避けられる。とくにお盆は子供の夏休みの期間だから、いつでも帰省できる。それなのに、わざわざ帰省ラッシュを作り、それを体験したいがため、山の日を利用して一斉に旅行するのか。
今後の政府の政策としては、祝日の数を減らし、その代わりに有給休暇の取得を推進すべきである。堅気のサラリーマンだった頃から思っていたのは、使わなかった有給休暇を企業に買い取らせる制度の導入である。同時に、有給休暇を使うのは有能、使わないのは無能との意識を職場に植えつけることである。経営のトップ層になると休むに休めないことも生じるから、その場合は、あまり在席していないのは有能、常に在席しているのは無能かも知れないが。
祝日という一斉の休みを減らし、有給という個性ある休みを増やすことは、生産性の向上にもつながる。たとえば次のようなことがあろう。
若者に対する企業の魅力度を増す。本当の意味でリフレッシュできる。海外での業務が多くなっている場合、仕事の日時の調整が少なくすむ。誰かが急に休むことを想定し、常に仕事の段取りを心がけないといけない。スポット的に、ネットを使ったオンライン参加を請う事態も想定し、打ち合わせや会議のシステムを設計しなければならない。もっとあるかも知れないが、とりあえず以上のようなことか。
それでも政府が今の祝日にこだわるとすれば、国営放送などに毎年恒例の帰省ラッシュのニュースを提供させるためかもしれない。すごいね、日本政府。
2025/08/11