日経は農業政策への批判を強めている。今日の日経新聞はその象徴だろう。取り上げていたのは、パプリカ農業法人の成功事例、保護政策の下でのコメ生産性の国際的な地位低下、堂島取引所のコメ先物取引の低迷である。
日本の農業保護政策の特徴は零細・兼業農家の保護であり、コメを代表とする農業の国際的な地位を、技術や効率性の観点からほとんど意識してこなかったことにある。本来はJAが世界の動向に注意し、改革案を提供することで国際的な地位の「保護」を図らなければならない。言霊を無暗と信じて「表現しただけで達成感、満足感を得てしまう」日本的風潮を感じて好きでない用語ながら、「攻め」という修飾語を用いると、「攻めの農業保護」を図らなければならなかったのに、100%「守りの農業保護」に陥ってしまった。
余計なことを言えば、JAは古き良き時代の商社的、金融機関的な口銭(仲介手数料)商売を続けてきただけである。カルテルが認められない状況において、十分な口銭を確保する方法には2つある。1つは、素晴らしい技術やサービスを提供すること。もう1つは、売り手もしくは買い手の少なくともどちらか一方が情報弱者(極端には無知)であること。日本の農業においてどちらが選択されたのか。明らかに後者である。理由は簡単で、ほぼ努力がいらない。「(守りの)保護」を声高に叫び、情報弱者である零細・兼業農家による日本農業を維持するだけで達成できたから。断っておくが、JAが暴利を貪ったわけではない。独占的に従前と同程度の利益率の維持を目標に掲げ、実現しただけである。
なお以上は、データをつぶさに確認していないので、「多分」である。さらには金融関連(JAバンク、共済)の収益環境は厳しいと考えられるので、それを除いた収益の推移を見ないといけないこともある。
それはともかく、これまでの守りの農業保護政策は、強い農家を生み出さず、政策立案側には好都合だった。一方、日本農業という観点からは、つまり国民的視点からはきわめて不都合だった。日経の記事にあるように、主食であるコメの生産性で世界の後塵を拝してしまったのだから。
今後、日経の記事には従前の農政批判が続くことだろう。昨年夏以降のコメ政策の大失点から、農政の不備が明白になった。農水省としては、政策をJA目線から国民目線に大転換し、一から出直さないといけない。
2025/08/13