川北英隆のブログ

知床のヒグマ事件に思う

ヒグマの多い知床にあって、今回の登山者死亡事故は、2005年に世界自然遺産に登録されて初めてだとか。その知床、聞くところによると、自然遺産登録後、様変わりしているらしい。
Yahooニュースの体験記事が参考になったので、それも混じえて感想を書いておく。
知床の現状はつぎのようなところらしい。観光客が多数押し寄せている、近くに(浅い川を挟んで20mほど先に)クマが出ると歓声が上がりシャッター音も賑やかに写真撮影タイムとなる、食べ残しを含めてゴミが大量に出る、動物への餌やりが横行する、とくに観光横断道路(国道334号線)が開通してからは車からクマへの餌やりが公然と行われている、羅臼岳への登山者も非常に多い(事故当日は150人ほどが入山していたとか)。
海外の自然遺産や国立公園を歩いて思うのが、日本の自然遺産や国立公園が「観光」のための登録や指定になっている事実である。海外は、すべてとは言わないまでも、欧米の先進国では「自然」のための登録である。
だから欧米では人数を含めて入域制限が普通だし、入域料が徴収される。この制度は「行政が儲けるため」ではなく、自然を守るためである。たとえばレインジャーを雇用する資金となる。その一環として、入域に際してガイドを雇うことが条件となる場合もある。ガイドなどは入域者のゴミ処理の指導もする。
日本は自然に関する後進国である。この結果、富士山の問題が生じている。今回の知床も同じだろう。さらに思い出すのは知床で観光船の沈没自己である。やはり観光優先が生んだ悲劇だろう。
知床はヒグマが多い。とすれば入山制限をし、羅臼に登るには地元ガイドを付けるのを原則とするのが最善ではないのか。ガイド料が加わるから高い登山になるが、仕方ない。ガイドを付けずに密かに登山し、ヒグマに襲われたら、そこで自己責任を問えばいい。
現状のように餌付けを放任し、同時に誰でも簡単に羅臼に登れるようにすれば、大勢が登山する。当然、ヒグマは人をあまり怖がらなくなり、ウロウロするから、時には不愉快な遭遇が生じる。子連れのクマは凶暴だから、不意に出くわせば襲うだろう。
今回の事件は、登山者にとってもクマにとっても悲劇だった。この悲劇の責任の一端は行政の責任だと思っている。

2025/08/20


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