川北英隆のブログ

「ここで売らんと」日銀ETF

昨日、日銀が日本株ETFの売却方針を発表した。一部にはサプライズだったらしくて、ネットで見ると読売新聞の見出しにも「サプライズ発表」とあり、同じ記事に某証券会社のチーフエコノミストの発言として「寝耳に水」との引用まである。「ほんまかいな」だ。
ポジショントーク抜きに客観的に言えば、9/12の「株価上昇のネコジャラシ」に書いたように、今の日本の株価ははしゃぎすぎであり、「どうかしてる」。日銀が本当に政治から中立的なら、酒井くにお・とおる的に「ここで売らんと、売るとこないよ」だろう。専門家として真面目に金融市場を分析していれば、1989年の日経平均の史上最高値をはるかに超えてきたし、「売っても問題なし」と判断できる。
日銀が日本株のETFを買い始めたのは、市場があまりにも悲観に陥っていたからである。その後は日銀がはしゃぎすぎ、9/18に図示したように今や市場全体の7.5%も保有するという異常さである。この異常さを残したまま日本の株価が史上最高値を更新と言われても、「ほんまの実力を見せい」と言いたくなる。
それはともかく、昨日示された日銀のETF売却金額は「小出し」だった。この小出しのペースが続ければ、完売するのに100年かかる計算になる。日経はこの「100年」を強調して書いていたが、日銀とて算数はできる。100年もかければ何代もの日銀総裁の頭を悩ますことになり、「誰がアホやったんや」と犯人探しになる。
とすれば、昨日に示された金額は「様子見の金額」と考えていい。市場の反応を見つつ、新たな機会を見て増額は当然だし、市場外での売却も考えられる。NISAに特別枠を作ってもいいだろう。
いずれにしても日本の株式市場を正常化する一歩である。「ここで出んと、出るとこないよ」と、そろりとの一歩だ。ふと、「買う時は異常に大胆だったのに、売るときは慎重過ぎるほど慎重とは、きわめて非対称的」と気づき、経済学でいう「下方硬直性」という一種の病気を思い出してしまった。

2025/09/20


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