川北英隆のブログ

投資信託の無節操話に要注意

今朝の日経新聞を読んでいると不穏な記事があった。満期までの期間が30年ある超長期国債などを組み入れた投資信託を(ETFを含めて)アセットマネジメント会社が商品化し、さらに検討しているという。「またもや節操のないことを」と思う。
現在の利回りは30年国債で3%を、20年国債で2.5%を超えている。債券だから株式よりも安全だし、利回りが魅力的と考えては間違う。超長期債の値動きは株式と同様に激しい。
たとえば利率3%の30年債の場合、発行時元本を100円とすれば、市場金利が3%なら100円で取引される。市場金利が1%上がって4%になれば、取引価格は82.71円になり、17.3%下落する。
これが10年国債だった場合は91.89円、5年国債だった場合は95.55円までしか下がらない。債券が「安全」なのは満期までの期間が短い場合である。
断っておくが、これは簡易計算であり、1年金利も、2年金利も・・・30年金利も3%から4%に上がると想定しているので、現実的ではない。しかし超長期債の値動きが激しことに変わりない。
しかも債券の場合、信用リスクも気になる。アルゼンチン国債(外貨建)はデフォルト、つまり債務不履行を何回も繰り返した。戦前の日本国債は戦後になって元利金を約束通り支払ったものの、敗戦直後のハイパーインフレーション(超インフレ)で、返ってきた元本の値打ちが雀の涙、ノミの小便にまで低下していた。
そもそも日本の超長期国債の利回りが「魅力的」と映る水準にまで上昇しているのは、日本がいずれハイパーとは言わないまでも、今以上のインフレに襲われるのではないか、政治家のバラマキ大好きという人気取り政策によって日本の財政が破綻するのではないか、デフォルトしたアルゼンチン化するのではないかとの、プロ投資家の一抹の危機感が裏にある。
5年程度では日本に危機は訪れないとある程度の確信を持って言えるが、20年、30年先のことは分からない。そうなれば、3%の金利が4%程度では収まらない。利率3%の30年国債の場合、市場金利が10%になるだけで34.01円と70%近く下落する。
超長期金利が上がっているのは生保をはじめとするプロの投資家が買わなくなったからだとも説明されるが、20年、30年保有したいほど本当に魅力的なら、プロ投資家の誰かが買うだろう。しかしそんなプロは登場していない。魅力的に見えないからに過ぎない。
要するにアセットマネジメントとしては、「金利が高くて売れそうな投資信託を作れる」「そうすれば売れて、とりあえず儲かる」との算段でしかない。悪評高い株式のテーマ型投資信託と同じである。
ちなみに僕は日本の債券に投資していない。1990年以降、日本株からしばらく離れた時も、円債に投資しようとは思わなかった。資金に少し余裕ができた時、債券に投資するのなら先進国通貨建ての外債だろうと、2000年前後から投資を始めたと記憶している。しばらくは円高に悩まされたが、満期を迎えた外債をそのまま乗り換え続けた結果、ようやく円高の恐怖が去った。利率も日本国債よりも高い。今でも外債投資を進め、勧めている。

2025/09/19


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