京都の地下鉄は不便である。5時半頃からしか動かない。今回のように京都駅始発の山陰本線に乗る場合、自宅から30分以上の歩きとなる。その始発に乗り、西舞鶴から丹後鉄道に乗り換え景色を見ていると、「由良川の河口を橋で渡るのや」と、ふと気づいた。
由良川、あまり知られていないと思うのだが、大きな川である。流域面積は紀の川よりも大きく、熊野川に迫る。源流域は京都の美山の奥、京大演習林の広がる芦生である。かつてその最奥の三国岳を歩き、由良川の源流方面を眺めた。その大きな流れの河口を見られる幸運を、迂闊にもその直前まで気づかなかった。
丹後由良で降りると、眼の前に由良ヶ岳があった。由良ヶ岳は山頂が東西に分かれ、2つは直線距離にして1.3キロほど離れている。東峰と西峰と呼ばれるが、正確には東南峰と西北峰である。東峰の方が高いのだが、三角点は西峰にある。
丹後由良駅は北から出る。駅前に観光用の看板があり、安寿と厨子王丸の物語の中心地だとある。初めて知った。金沢の方の話かと思っていたのは、親不知のイメージが強いからか。
駅前から少し北西へと歩き、南西に折れる。線路を越せば後は一本道に近い。何かの施設用の建物を2つ過ぎると車道が終わり、その右側に登山口がある。登山証明書などを置いてある建物があり、その奥に獣避けの扉がある。それをくぐると登山が始まる。
登り始めは花崗岩の腐った地層を水が削り、深い溝状になった道である。大水の時に滝になる大きなギャップもあり、適当に溝の上に上がって歩く。
最初は広葉樹や竹、植林の交じる雑然とした林だが、そのうち広葉樹が多くなる。ドングリ類の実がたくさん落ちている。遠くでシカが鳴く。かつての炭焼きの跡を過ぎ、その先で植林に変わり、かつ溝から解放される。
植林地帯を少し登ると古い林道跡を横切る。その後は急登である。斜面をトラバース気味に渡り、さらに急登を続ける。斜面が広い谷状に変わり、やがて植林がまばらになり、雑木が混じり始める。稜線部が近づいたと思える。
稜線の鞍部に出るとブナなどが混じる広葉樹の林だった。下草が少ないのはシカが食べるからか。
その稜線上の鞍部から、まずは東峰を目指した。少し斜面はきついながら、歩きやすい。すぐに刈り払われた山頂に出る。三角点はない。地元の情報では647mだとか。
山頂からは由良川の河口と若狭湾が間近に見え、由良の村落の姿もあった。遠くには青葉山の富士山のような鋭角的な姿があり、その東峰と西峰が由良ヶ岳からは双耳に見える。白山が見える日もあるようだ。
山頂に鎮座する石積の虚空蔵菩薩の祠を拝んだ後、東由良ヶ岳との名のある585.0mの三角点峰を目指すかどうか迷った。立ち寄ると丹後由良12時少し前発の列車にギリギリだと思え、諦めた。
上の写真は由良ヶ岳東峰の山頂であり、虚空蔵菩薩の祠でもある。下は山頂からの由良川河口(海の白波の右側が河口、その河口のさらに右に丹後鉄道の鉄橋の黒い筋)と青葉山(三角形のピーク)である。
2025/10/11