コメ価格が高止まりしている。農水省は「今年のコメは豊作」と予想しているのに、その報道への反応が見えない。一方、農水省の子分の農協が、農家から高値でコメを買い取っているとも報じられる。コメの仮払金(概算金)が高い水準にあるらしい。豊作の真偽は。
そもそも何が本当なのか。信頼に足る情報が十分にないから、コメを食べる国民としては文句を言えず、かといって昨年の教訓から農水省の豊作宣言を信じるわけにもいかず、もやもやしたまま高いコメを買い続けている。
この主食を巡る大混乱の原因の一端は、原始的なコメ行政にある。役所の一声ですべてが決まり、それに従っていれば万事がうまくいくはずとの、農水省自身の思い込みにある。別角度から見れば、多くの情報が集まる市場を完全に無視してきたから、農水省はいまだに農協という子分を利用しつつ、手作業で情報を集めている。このため、行政自身が正確な情報を得ていない。この情報不足と不備は、昨年の失態で明らかになった。
今、必要なのはコメ市場だろう。コメの需要と供給の情報が自然と集まる場を作り上げることである。コメのような農作物の場合、植え付けから収穫までに時間を要する。そうであるから先物市場(先々の取引価格を現時点で契約する取引の場)が必須である。
この市場に関して、農水省は冷淡だったと記憶する。推測だが、農水省の権限が市場に及ばないこと、むしろ農水省の行政が市場価格に翻弄されかねないことを嫌悪したのだろう。つまり農水省の権益が縮減し、知恵の有無が試されると嫌がった。だから消極姿勢に徹した。
しかし先物市場は農水省の行政にとって大きな力となり得る。株式市場や為替市場が金融庁や財務省の大きな力となっているのと同じである。
コメの先物市場を大きくするには、まずは需要者の代表である農協の質を高めなければならない。さらには商社などの農協以外の卸売業者の参入を促さないといけない。同時に、生産者側の質を高めることも緊急の課題となる。これもまた農協の質を高め、さらに新規参入を図ることで成立するのではないか。これらの行政を取り仕切るのは農水省の役割であり、取り仕切る過程で農水省の権限が高まる(僕として、嬉しいこととは思わないが)。
ではコメの先物市場が、どのようにして役に立つ情報をもたらすのか。価格が上がれば需給が逼迫している証拠である。農水省として、その逼迫の理由を探ればいい。価格が下落した場合は需給の緩みの原因の調査である。これらに基づき、農水省として正しいコメ対策をいち早く打ち出せる。
生産者に対する最低価格保証も容易になる。まずは生産者として先物を売り、コメの売却価格を確定する方法がある。農協が概算金を支給する場合も、先物価格が立派な基準となるから、手探りで決めて高く買ってしまうという愚を避けられる。先物価格が下がり過ぎて農業政策に問題が生じるようなら、農水省が動き、コメを買い支えればいい。
そもそも農業に市場が必要でないとの発想は、アメリカの市場を引き合いに出すまでもなく、「経済オンチで原始なのや」としか思えない。発奮してほしいものだ。
2025/10/13