
赤石ヶ岳からの下り、タクシーを呼んだところ、電話番のおっちゃんとの会話に苦労した。山から抜け電話が繋がったものの、相手は「音が途切れる」と言う。致命的だったのは「今どこ」との相手の質問に、「山河」と応えるのだが、「分からない」とのことだった。
「やまかわ」と「さんが」の両方とも通じなかった。後から聞くと、「さんごう」と読むのだとか。宮津地方では「河」を「ごう」と読むことが多いと説明してもらった。そもそもこの地域では「河」といっても、小川か沢であるから、針小棒大である。
そんな解説をしてくれたのがタクシーの運ちゃんだった。「読み方が難しいね」という話になり、運ちゃんが蘊蓄を語った。与謝は「よざ」が地域の読み方だとか。元々、天橋立のある今の与謝野町は2006年、与謝郡の加悦町、岩滝町、野田川町の3町が合併してできた町である。その時に新しく「与謝野」を用いた。
その与謝郡の読み方は「よさ」ではなく「よざ」だった。与謝郡加悦町の一部だった与謝という村落も「よざ」だった。なのに今の与謝野町は「よさの」と読む。何故なのか。簡単である。与謝野といえば与謝野鉄幹であり、むしろ晶子だろう。その明治の有名人にあやかった命名である。
そもそも与謝野鉄幹の父親(というか代々かも)は与謝郡の出身である。その父親の姓は元来細見だったらしいが、明治に入り、出身地にちなんで与謝野に変えたらしい。与謝野鉄幹は京都生まれだったものの、姓は与謝野を受け継いだ。もちろん鉄幹と結婚した晶子も与謝野になった。
その与謝野が有名になったものだから、加悦町、岩滝町、野田川町の合併によって生まれた新しい町の名が、3町の平和のために与謝野町となった。と、ここでさらにややこしいことが生じた。
というのも、与謝郡は今もある。与謝という地域もある。このため、運ちゃんが教えてくれたことには、実在する与謝郡与謝野町与謝をどう読むのかといえば、「よざ・・よさの・・よざ」である。与謝野鉄幹・晶子はまたまた罪作りなことをしたわけだ。
ついでに写真をアップしておく。上は鞍部付近から見た、左から天ヶ峰と三岳山である。三岳山は大江山の主峰である千丈ヶ嶽よりも少し高い。下は与謝にある大江山鬼岳稲荷神社遙拝所である。タクシーに急いでいたので中に入らず、後で知った。この地域では大江山が神聖な場所だったわけだ。


2025/10/28