川北英隆のブログ

日本の株価は異常か

昨日の続きである。アメリカ市場ではAI(人工知能)関連企業の株価が上昇している。エヌビディアが代表で、マイクロソフト、アルファベット(グーグルの持株会社)などが続く。時価総額はそれぞれ4.8、3.7、3.5兆ドルに達する。世界のトップ企業の威力といえる。
彼の国でのAIブームを受け、日本でもAIに関連する企業が急騰している。ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、アドバンテストなどが代表的だろうか。これらの企業は日本市場の中で時価総額上位10社に入るのだが、その額はそれぞれ31.9、16.0、15.0兆円であり、1ドル154円を使ってドルに換算すると、0.207、0.104、0.097兆ドルになる。世界のトップ企業に比べると小人である。
とはいえ、そんな小人にAIブームの恩恵にあやかろうと投資資金が殺到するから、これらの企業の株価が跳ね上がるのはむべなるかなと思える。しかもこれらの企業は日経平均株価での構成比において1社で5%前後を占める「日経平均株価に対して影響力大」の企業である。だから、「それぞれの株価が跳ねる、日経平均株価が大きく上がる、株式市場が実態以上に活況に見える」との効果が生まれてしまう。
そこで日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)との比率を計算してみた。具体的には、2つの株価指数について09年12月末を1とした数値に直した後、日経平均株価の数値をTOPIXの数値で割り算して比率(N/T倍率)を出した。
それがアップした図表である。ここからN/T倍率について次のことが判明する。21年年初まで上昇を続けた後、25年年初まで下落傾向にあったのに、3月を底に倍率が急上昇し、10月には10年以降の新記録の水準にまで達した。
この25年3月以降のN/T倍率が意味することころは、「日本のAI企業の株価だけが異常に高騰した」ことである。
アメリカ市場ではエヌビディアなどについて、「バブル的高値にある」との評価が生じつつある。AIに関して世界をリードする企業がバブルなら、そのブームのお裾分け程度の位置にある日本のAI関連企業の株価急騰をどう表現していいのか。
警報とは言わないまでも、要注意領域に入ったことだけは確かだろう。もう少し付け加えれば、日本のAI関連企業を買うくらいなら、アメリカのAI関連企業を買うほう賢いかもとなる。
追記:本文の日経平均株価の構成比は古い数値だった。10月末のウェイトを書いておくと、アドバンテスト11.89、ソフトバンク10.43、東京エレクトロン6.59%である。3社の影響力はますます巨大になっている。

20251111TOPIX対日経平均株価.jpg

2025/11/11


トップへ戻る