川北英隆のブログ

群れる投資は間違いの元凶

プライベート・デット(PD)の混乱が報道されている。銀行による貸出ではなく、金融業を営む非銀行企業がファンドを募り、そのファンドが企業に対する貸出を資産として保有する形態をPDファンドと呼んでいる。要するに銀行を抜きにした貸出である。
そもそもはプライベート・エクイティ(PE)があった。上場していない株式をPEと呼び、そのPEに投資するファンドが早くからあった。「プライベート」とは、上場企業の株式(公開企業の株式、すなわちパブリック・エクイティ)の対語だった。
PDの場合、元々は非上場企業への貸出が多かったから「プライベート」が用いられたようでもあるが、本当のところはPEとの対比だったのではと推察する。現状からすれば、王道である銀行を通さない「裏口貸出」、だからプライベートと考えるのがいいだろう。
当然ながら、PDの貸出企業は銀行貸出の対象にならない企業が多い。それ故に、審査を経て、担保付き(多くは最優先抵当権の設定)の貸出債券とすることが多い。しかも本来の貸出の多くは中小企業向けとされ、そうであるのなら分散効果が働く。ファンドとしては債権の回収不能率を過去の経験から計算し、それを貸出金利に上乗せすれば、高い収益を見込める。景気が拡大しているのなら倒産も少なく、PDの収益力が高くなる。
結果として、ファンド運用会社は高い手数料を得つつ、(金銭債権としては)高い投資収益をファンドへの出資者に配分することができる。だから人気が沸騰してきた。日本でも年金ファンドや、大学への資金援助のために設定された10兆円ファンドなどがPDを運用対象としている。それを見てか見ないでか、政府もPDを含めたオルタナティブ資産(市場で活発に売買されている株式や債券とは異なった投資資産という意味での資産)への積極投資を年金などに強く求めたようだ。
そのPDファンドだが、変調をきたしている。ブルー・アウル(OWL)という新興ファンドに取付もどきの騒動が勃発した。つまりファンドの解約が殺到したのである。ブルー・アウルはニューヨーク証券取引所に上場しているのだが、株価が1年ほどで1/3程度にまで落ち込んでいる。
PDファンドに関して、ブルー・アウルだけではなく、大手のブラックロックやブラックストーンのファンドにも解約が集まっている。PDにデフォルト(返済などの債務不履行)がどの程度発生しているのかどうか情報がないものの、調べたところ発生が増えているとの漠然とした情報がある。
実は僕にも、PDファンドを買わないかとの勧誘があった。投資資金が少ないと手数料が高く、買っても儲からないと思ったことと、PDがブームだと知っていたことから、遠慮した。「そんなんに投資するくらいなら上場株式のほうが余程まし」とも思った。
そもそも個人にお鉢が回ってくるブームほど怪しげなものはない。個人にお鉢が回ってくるくらいだから、年金が同時スタートで投資するのなら、業者のやりたい放題に違いない。要するに「アホやん」である。投資の歴史を知っていると、「群れる投資は、つまりブームに追随する投資の多くは間違い」でしかない。つまり二匹目のドジョウはいない。

2026/03/07


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